放射線肺炎は,放射線治療の有害事象として起こる非感染性の肺炎である。放射線照射により傷害された肺組織では,主に間質に炎症が起こり,後に線維化をきたす。通常,放射線照射野に一致してみられるが,照射野以上に広がる場合や,対側肺に広がる場合もある。照射総線量40Gy以上ではほぼ必発であり,多くは照射後6カ月以内にみられる。慢性的に線維性変化が継続する場合は,放射線肺線維症とも呼ぶ。
画像所見を認めても無症状のことが多いが,乾性咳嗽,息切れ,全身倦怠感,発熱等の症状を伴うことがある。放射線治療中から照射終了後6カ月以内(特に照射後1~3カ月)に発症することが多いが,6カ月以上経ってから発症することもある。
胸部聴診にて捻髪音の有無,また,経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)低下の有無を確認する。血液検査では,非特異的炎症反応(WBC,CRP),LDHの上昇を示す。間質性肺炎のマーカーであるKL-6,SP-A,SP-Dが有用な症例もある。肺機能検査では,肺活量,努力肺活量,拡散能の低下を示す。胸部X線写真では,解剖学的構造に一致しない,非特異的なすりガラス影や斑状影を認める。CTにて照射野と一致することの確認が重要であるが,時に照射野以上に広がる場合や,対側肺に広がる場合があるため,注意を要する。乳癌の場合は,接線照射で起こる器質化肺炎にも留意する。慢性期には進行性の容積減少,収縮性変化,牽引性気管支拡張などの構造性変化を示す。照射野を反映して正常肺との境界が直線状となることが多い。
重症度に関しては,一般的にRadiation Therapy Oncology Group(RTOG)/European Organisation for Research and Treatment of Cancer(EORTC)遅発性放射線反応評価基準(表)を用いる。
市中肺炎,ニューモシスチス肺炎,急性心不全などが鑑別に挙がる。膿性痰の有無を確認し,β-D-グルカンの測定,心エコー検査を施行する。呼吸器専門施設では,気管支鏡検査の適応を考慮する。抗悪性腫瘍薬や免疫チェックポイント阻害薬の使用歴がある際は,薬剤性間質性肺炎との鑑別が問題となる。また,放射線治療開始前の胸部CT画像を確認し,もともとの間質性肺炎の有無を確認することが重要である。
まず,放射線治療開始時期,終了時期,照射範囲,照射線量,実際の照射野を確認し,上記の臨床症状,検査結果,画像検査と併せた状況の把握を行う。
治療方針としては,自覚症状に乏しい場合は慎重に経過観察を行う。陰影が照射範囲を超える場合,中等症以上の症状を認める場合はステロイドによる治療を検討する。また,SpO2値を確認し,低下を認める場合には動脈血酸素分圧を測定し,早急にステロイド治療を導入する。
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