消化管ポリポーシスをきたす家族性大腸腺腫症(FAP)以外の疾患として,Peutz-Jeghers症候群(PJS),PTEN過誤腫症候群(Cowden症候群),若年性ポリポーシス(JP),Cronkhite-Canada症候群(CCS)などがある。的確な診断と治療,悪性腫瘍合併に対するサーベイランスが重要である。
ポリポーシスの発生部位,肉眼的特徴,病理組織学的所見,合併症,家族歴,必要に応じて遺伝学的検査を行い診断することが肝要である。
口唇,口腔粘膜,指趾に色素斑を認める。胃・十二指腸,小腸,大腸のいずれかに過誤腫性ポリープが発生,特に十二指腸から上部空腸に多い。LKB1/STK11遺伝子の生殖細胞突然変異を伴う。常染色体優性遺伝であるが,50%は家族歴のない孤発例である。幼児期に腸重積を契機に診断される症例もある。
原因遺伝子が同一であるBannayan-Riley-Ruvalcaba症候群(BRRS),Proteus症候群(PS),Proteus様症候群は,表現型が異なるのみで同じ機序で発症し,PTEN過誤腫症候群と総称される。全消化管に過誤腫性ポリープが発生する。皮膚・粘膜,消化管,乳腺,甲状腺,中枢神経,泌尿生殖器に過誤腫性病変が多発する。PTEN遺伝子の変異,欠失,重複がみられる常染色体優性遺伝性疾患であるが,50%以上は孤発例である。食道のグリコーゲンアカントーシス多発が特徴的で,診断の契機になる場合が多い。
全消化管に過誤腫性ポリープである若年性ポリープが多発する。「若年性」とはポリープの病理形態を示し,発生年齢が「若年」という意味ではない。ばち状指,多指(趾)症,巨頭症,脱毛症,口唇口蓋裂,先天性心疾患,重複腎盂尿管,(双頸)双角子宮,停留精巣,過剰歯,知的障害などの消化管外合併症がある。SMAD4遺伝子,BMP receptor 1A(BMPR1A)遺伝子の生殖細胞変異を各々20%ずつに認める常染色体優性遺伝性疾患であるが,25%は孤発例である。
胃・十二指腸,小腸,大腸に過誤腫性ポリープが多発する非遺伝性疾患である。胃では粘膜浮腫を伴う境界不明瞭な隆起性病変,大腸ではイチゴ状の境界鮮明な隆起性病変が典型的である。慢性下痢を呈し,重症例では低蛋白血症をきたす。全身の脱毛,爪甲萎縮,皮膚色素沈着,味覚異常を伴うことがある。中高年の男性に多い。原因は不明であるが,強いストレス後に発症することがある。
残り1,192文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する