株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

ピロリ菌の再感染

No.5036 (2020年10月31日発行) P.50

沖本忠義  (大分大学医学部消化器内科講師)

村上和成  (大分大学医学部消化器内科教授)

登録日: 2020-10-28

最終更新日: 2020-10-28

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

成人でピロリ菌に未感染の人や,除菌後の人は再感染が起こらないとされていますがその理由をご教示下さい。また,再感染するとどのようなことが考えられますか。(東京都 S)


【回答】

【再感染しても自覚症状はなく,内視鏡検査時にびまん性発赤や粘膜腫脹などを認める】

ピロリ菌除菌後の成人への再感染は,報告されています。

2017年のシステマティックレビュー1)では,国際的な再感染率と再陽性化率(除菌判定時の偽陰性例を含む)を,それぞれ3.1%と4.3%としています。この報告によると,わが国の再陽性化率は2.0%ですが,ご質問の再感染率と再陽性化率を明確に区別することは,複数の種類の菌株が感染する可能性もあり困難です。2012年のわが国からの報告2)では,遺伝子配列の比較より年間再陽性化率を0.22%としています。未感染成人の初感染については,学会での症例報告等ではみられますが,再感染率を超えることはなく“稀”だと推測されます。

当院のケース(20例程度)では,再感染しても自覚症状はなく,定期的な内視鏡検査時に,胃炎の京都分類3)に記載されているびまん性発赤,粘膜腫脹,皺襞腫大・蛇行,白濁粘液,点状発赤などのピロリ菌現感染時にのみに認められる所見がみられることが多いようです。

【補足:再感染と再燃について】

除菌判定時に陰性であり,その後に再度ピロリ菌が陽性となる原因として再感染と再燃(除菌判定時の偽陰性)が考えられます。再感染が,除菌治療によりピロリ菌が胃粘膜より消失し,その後体外より新たな菌が感染し再陽性となることを意味するのに対し,再燃は除菌判定時にピロリ菌が胃粘膜に残っているにもかかわらず陰性と判定され,時間が経ってから菌数が増え再陽性となることを意味します。

【文献】

1) Hu Y, et al:Aliment Pharmacol Ther. 2017;46 (9):773-9.

2) Take S, et al:J Gastroenterol. 2012;47(6):641-6.

3) 加藤元嗣, 他, 編:胃炎の京都分類改訂第2版. 春間 賢, 監修. 日本メディカルセンター, 2018.

【回答者】

沖本忠義 大分大学医学部消化器内科講師

村上和成 大分大学医学部消化器内科教授

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top