【再感染しても自覚症状はなく,内視鏡検査時にびまん性発赤や粘膜腫脹などを認める】
ピロリ菌除菌後の成人への再感染は,報告されています。
2017年のシステマティックレビュー1)では,国際的な再感染率と再陽性化率(除菌判定時の偽陰性例を含む)を,それぞれ3.1%と4.3%としています。この報告によると,わが国の再陽性化率は2.0%ですが,ご質問の再感染率と再陽性化率を明確に区別することは,複数の種類の菌株が感染する可能性もあり困難です。2012年のわが国からの報告2)では,遺伝子配列の比較より年間再陽性化率を0.22%としています。未感染成人の初感染については,学会での症例報告等ではみられますが,再感染率を超えることはなく“稀”だと推測されます。
当院のケース(20例程度)では,再感染しても自覚症状はなく,定期的な内視鏡検査時に,胃炎の京都分類3)に記載されているびまん性発赤,粘膜腫脹,皺襞腫大・蛇行,白濁粘液,点状発赤などのピロリ菌現感染時にのみに認められる所見がみられることが多いようです。
除菌判定時に陰性であり,その後に再度ピロリ菌が陽性となる原因として再感染と再燃(除菌判定時の偽陰性)が考えられます。再感染が,除菌治療によりピロリ菌が胃粘膜より消失し,その後体外より新たな菌が感染し再陽性となることを意味するのに対し,再燃は除菌判定時にピロリ菌が胃粘膜に残っているにもかかわらず陰性と判定され,時間が経ってから菌数が増え再陽性となることを意味します。
【文献】
1) Hu Y, et al:Aliment Pharmacol Ther. 2017;46 (9):773-9.
2) Take S, et al:J Gastroenterol. 2012;47(6):641-6.
3) 加藤元嗣, 他, 編:胃炎の京都分類改訂第2版. 春間 賢, 監修. 日本メディカルセンター, 2018.
【回答者】
沖本忠義 大分大学医学部消化器内科講師
村上和成 大分大学医学部消化器内科教授