21-水酸化酵素欠損症(以下,本症)は,先天性副腎過形成症の中でも最も頻度の高い疾患である。本症患児は,新生児マススクリーニングでは出生約1万8000~1万9000に対して1人の割合で発見される。本症は古典型(塩喪失型,あるいは単純男性型)と非古典型にわけられるが,塩喪失型ではコルチゾールとアルドステロンの産生が障害される。本稿では主に塩喪失型について述べる。
①ホルモン(コルチゾール,アルドステロン)欠乏症状:新生児期に哺乳不良や体重増加不良,嘔吐,下痢,脱水などの塩喪失症状を呈する。
②副腎皮質刺激ホルモン(ACTH),副腎アンドロゲン過剰症状:コルチゾール合成障害に対するフィードバックによりACTHが過剰に産生され,合成が障害されていない副腎アンドロゲンが過剰に産生される。この病態は胎生期から存在するため,女児では陰核肥大や陰唇癒合,共通泌尿生殖洞などをきたし,性別の判定が困難になることがある。また,ACTHの過剰産生により全身の皮膚・粘膜の色素沈着をきたす。
高17-OHP血症は,本疾患に特徴的な検査所見である。早産児に多い一過性高17-OHP血症や他の高17-OHP血症を呈する疾患との鑑別には,ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いた尿中ステロイド代謝産物の測定が有用である。また,病態把握のために血漿ACTH,血清電解質,血漿グルコース,血漿アルドステロン,血漿レニン活性またはレニン濃度,血液ガスの測定を行う。
治療の基本は,不足したホルモン(グルココルチコイドとミネラルコルチコイド)を補充することと,副腎アンドロゲンの過剰産生を抑制し,健常小児と同等の成長,成熟を確保することである。治療は一生涯にわたり,それぞれのライフステージで細やかな対応が必要になる。
グルココルチコイドの投与量が過剰になると,食欲の亢進や肥満,身長増加の抑制を引き起こし,投与量が不足すると,色素沈着や男性化の進行,骨年齢の進行,副腎不全をきたしうる。治療のモニタリングとして各種検査所見に加え,成長率の変化や骨年齢などを参考にする。エビデンスレベルの高いデータはないものの,グルココルチコイド服用前の早朝の血清17-OHP値はコントロールのよい指標となり,小児期,成人期ともに400~1200ng/dL,思春期で590ng/dL未満という報告がある。
ミネラルコルチコイドの投与量が過剰になると,高血圧や浮腫,低カリウム血症を呈し,投与量が不足すると,体重増加不良や成長率の低下が認められる。血圧や血漿レニン活性値を指標に投与量を調節する。
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