口側腸管が肛門側腸管に引き込まれ,腸管が重なって起こる腸閉塞症で,腸管の循環障害を伴う絞扼性イレウスの代表的疾患である。腸重積症の原因が特定できない特発性の回腸結腸型の腸重積症がほとんどで,先行感染による回腸リンパ濾胞(Peyer板)の肥厚や腸間膜リンパ節腫脹が先進部と考えられている。一方,腸重積の器質的病変を特定できる場合は稀で,ポリープ,メッケル憩室,異所性膵,腸管重複症,アレルギー性紫斑病などが病的先進部となっている。1歳未満の乳児が半数以上を占め,3カ月未満,6歳以上は少ない。
三主徴として腹痛・嘔吐・血便が挙げられるが,初診時にすべてがそろうのは10~50%とされる。5~30分の間欠的に不機嫌になり啼泣するのが特徴的である。初期には反射性嘔吐を伴う頻度が高いが,次第にイレウスが進行し,胆汁性嘔吐となり血便も経時的に増加してくる。24時間を過ぎると腹部膨満と発熱の頻度が増加してくる。このように,発症から受診までの時間により重症度が異なることを理解すべきである。
身体所見としては,腹痛の間欠期に触診し,右季肋部付近にソーセージ様腫瘤を触れ,右下腹部は空虚な感じ(Dance徴候)がある。腹部膨満の程度や腹膜刺激症状の有無を評価する。
腹部単純X線写真は,本症の診断的価値は少ないものの,遊離ガス像,小腸閉塞像の確認に有用である。
超音波検査は簡便で侵襲が少なく,感度・特異度ともに非常に高いため,スクリーニング検査に有用である。target signやpseudokidney signの有無で診断できるほか,重積腸管内筒の血流の評価,器質的病変の存在,腹水の有無など,重症度の指標にもなる。
CT検査は被ばくの問題で第一選択にはならないが,本症が否定しきれない場合や,稀である小腸小腸型を疑う場合は有用とされる。血液・生化学検査により,貧血,電解質異常,炎症反応,脱水の評価を行う。
嘔吐に伴う循環血液量の低下や脱水を補うため,本症が疑われる場合には,来院時から細胞外液補充液を用いて輸液を開始しながら,同時に診断を進めていく。軽症の場合でも非観血的整復術の合併症に対応するために輸液ルートを確保しておく。
注腸造影で特徴的な蟹爪様の陰影欠損で診断を確認した後,重積腸管の先進部に肛門側から圧をかけ,徐々に押し戻す非観血的整復が行われ,80~90%は整復可能である。非観血的整復術を無麻酔で行っても整復率には差はなく,全身麻酔や鎮静薬の投与は必要ない。初回の非観血的整復が不成功であった症例(他院で整復が不能であったと搬送された児)も診断を確認して全身状態が良好であれば,もう一度非観血的整復術を行う(delayed repeat enema)と多くの症例で非観血的整復が成功する。
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