No.5047 (2021年01月16日発行) P.12
豊田喜弘 (喜多方市地域・家庭医療センター ほっと☆きらり副センター長)
登録日: 2021-01-14
最終更新日: 2021-01-13
SUMMARY
定期通院の患者が「変われない」と行動変容が膠着しているとき,主治医はどのように働きかけるべきか。動機づけ面接によって患者のチェンジトークを引き出していくことは,マンネリ化した生活指導の打開策となりえる。
KEYWORD
チェンジトーク(change talk)
患者から発せられた変化に向かおうとする言葉。動機づけ面接では,これを患者の行動変容のかけらととらえ強化することで行動変容を促してゆく。患者がチェンジトークを述べることは,変わることへの動機を自ら強める効果がある。
PROFILE
福島県立医科大学医学部地域家庭医療学講座で家庭医療専門研修を経て,現職。日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医・指導医。同学会の専門医部会若手医師部門にも所属する。
POLICY・座右の銘
人間らしく生きる
生活習慣病などのケアでは,患者への生活指導は不可欠である。しかし,多くの患者は生活習慣の改善を指示されただけではなかなか変えられないものだ。たとえば,「運動したいのは山々だが,忙しい」と患者が運動不足を嘆く場面はみなさんもよく経験するだろう。「変わりたいけど,変われない」と,変化に対する肯定的な気持ちと否定的な気持ちが併存し行動変容が膠着している状態である。これを両価性(ambivalence)という。
患者の度重なる両価的な発言に,医師は苛立ちや諦めを覚え,生活指導もマンネリ化しかねない。しかし,この悩ましい両価性を,逆に行動変容のチャンスにできるとしたらどうだろう。