2013年4月に島根大病院に着任。同年10月より小児心臓外科チームの執刀医として、先天性心疾患児の手術に力を注ぎ、島根、鳥取両県における小児医療の“砦”の役割を担う。両県には藤本さんが来るまで小児心臓外科の専門施設がなく、手術を受けるには他地域へ出るしか選択肢がなかった。「一刻を争う病気の子どもが地元で手術を受けられる体制の重要性を感じながら手術に臨んでいます」
昨年、早くも「ここで手術していなければ助からなかった」という症例を経験した。
3月上旬、生後3日目の女児が搬送されてきた。女児の心臓は、大動脈と肺動脈が1本になった「総動脈幹遺残」という先天異常のため、肺へ行く血流量が多くなる一方で全身へ行く血流量が不足し致命的な状態だった。
藤本さんのチームは、肺への血流量を制限する手術を行い状態を安定させた上で、生後32日目に大動脈を分離し再建する根治手術を実施した。しかし総動脈幹遺残修復後の検査で、冠静脈が右心房ではなく左心房に開口し還流異常による低酸素状態を来していることが判明。総動脈幹遺残と冠静脈異常の合併症例は「世界的にも報告のないほど稀」だったが、手術は無事成功。女児は5度の手術を経て6月、元気に退院した。
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