No.5051 (2021年02月13日発行) P.12
大倉佳宏 (徳島大学病院総合診療部)
登録日: 2021-02-11
最終更新日: 2021-02-09
SUMMARY
自己放棄のため行動変容が難しいとき,セルフ・ネグレクトを疑う。ライフヒストリーや社会的要因を探り,変わらない理由を理解する。まずは患者の希望に沿うことから関係づくりを始めてみる。起こりうるリスクに備え,多職種で協力しながら見守り,気長に行動変容を支援する。
KEYWORD
セルフ・ネグレクト
しばしば高齢者においてみられ,健康,生命および社会生活の維持に必要な,個人衛生,住環境の衛生もしくは整備または健康行動を自ら放任・放棄すること。例として,治療やケアの拒否(健康行動の不足)や,いわゆる「ゴミ屋敷」(環境衛生の悪化)などがある。
PROFILE
香川大学医学部卒業。岡山家庭医療センターで家庭医療研修を修了し津山ファミリークリニック所長などを経て,2017年より現職。徳島大学総合診療専門研修プログラム副管理責任者を務める。日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医・指導医。
POLICY・座右の銘
やってやれないことはない,やらずにできるわけがない
これまでの4回で,行動変容を促すためにどのような関りが有効であるか,様々な視点から論じてきた。シリーズ最後となる今回は,それでも変わらない患者にどのように接するのかを考えてみたい。
CASE:72歳男性。以前から風邪や体調不良などがあると不定期に受診をしている。胸部レントゲンで肺気腫あり。ヘビースモーカー(40本/日×55年)で以前から禁煙を勧めているが,聞く耳を持ってくれない。
患者(以下,患):先生,頑張ってタバコやめても,今さら意味ないよ。別にだらだら長生きしたくもないし。タバコが体に悪いってことはわかるんだけど,もう別にいいんです。
このように,周囲からの支援を受け入れようとせず,健康を害するような行動をしたり,あるいは健康に必要な行動をしない人に出会うことはないだろうか。
行動変容は本人が変わろうとする思いが原動力であるが,変わることを放棄した患者に直面したとき,医療者は困難を感じる。