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特集:血痰・喀血をみたときの診断の進め方

No.5056 (2021年03月20日発行) P.18

本間雄也 (亀田総合病院呼吸器内科)

中島 啓 (亀田総合病院呼吸器内科部長)

登録日: 2021-03-19

最終更新日: 2021-03-18

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本間雄也 2018年久留米大学医学部卒業。那須赤十字病院での初期研修を経て,2020年より亀田総合病院に内科専攻医として勤務。呼吸器全般にわたって日々研鑽中。

中島 啓 2006年九州大学医学部卒業。聖マリア病院,済生会福岡総合病院を経て,2009年より亀田総合病院呼吸器内科に勤務。18年より現職。著書に『レジデントのための呼吸器診療最適解』(医学書院)。

1 血痰・喀血とは何か?
・喀血とは,気管,気管支,肺胞といった下気道からの出血を意味する。
・痰に,その血液が付着もしくは混在したものを「血痰(bloody sputum)」,血液が喀出された場合に「喀血(hemoptysis)」という。
・100~600mL/日の喀血量を認める場合を,大量喀血と呼ぶ。
・近年は,低酸素血症,血圧低下,気道閉塞,貧血など臨床的指標に異常をきたして,治療・処置を直ちに要するような生命に危険を及ぼす喀血を,“life-threatening hemoptysis”と定義するのが主流となっている。

2 本当に血痰・喀血か?
①血痰・喀血を診療する際は,まず本当に喀血なのかを評価する。
②血痰・喀血と鑑別を有するものとして,鼻出血,上気道,咽頭からの出血や吐血(消化管出血)が挙げられる。
③血痰・喀血と判断したら,まずは結核の可能性があるかを判断する。結核を考慮する際は,自身はN95マスク,患者にサージカルマスクを装着させる。患者は,陰圧の個室で隔離するのが望ましい。

3 バイタルサインの確認
①血痰・喀血は,窒息や呼吸不全のリスクがあるため,原因を考えていく前に,まずバイタルサインの確認を行う。それに併せて,気道,呼吸,循環の確認を行う。
②血液による窒息を回避する。
③低酸素血症があれば,SpO2 90%以上を目標に,酸素投与を開始する。
④大量喀血や循環動態が不安定な際は静脈ラインを確保し,輸液を開始する。

4 原因疾患の検索
①日常診療では,気管支拡張症,非結核性抗酸菌症,結核によるものが頻度が高い。他に,肺癌,肺アスペルギルス症なども比較的頻度が高い。
②全身状態が安定しており,時間的に余裕がある際は,詳細な問診を行う。血痰・喀血の既往,喫煙歴,飲酒歴,既往歴,生活歴,出血傾向,薬剤内服などの聴取を行う。
③身体診察では,口腔内の確認を行う。聴診上は血液が流入した肺野ではcracklesなどのラ音が聴取されるが,大量の出血の場合は無気肺を呈し呼吸音の減弱が認められることもあるので,注意する。
④検査では,喀痰抗酸菌塗抹・培養検査,血算・生化学検査,胸部X線,胸部CTを行う。

5 頻度が高い疾患と,見逃してはいけない疾患
①頻度が高い疾患について考える。
・気管支拡張症,非結核性抗酸菌症,肺アスペルギルス症,特発性喀血症,結核
②見逃してはいけない疾患について考える。
・肺癌,びまん性肺胞出血,肺血栓塞栓症

6 治療
①気管支鏡検査で出血部位,活動性出血の有無を評価する。
②気管支動脈塞栓術(BAE)が,血痰・喀血に対する治療の第一選択である。
③BAEでも止血が困難な場合は,外科手術が考慮される。

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