胃癌は胃粘膜から発生する悪性腫瘍で,ほとんどが腺癌である。ヘリコバクター・ピロリ(HP)感染による慢性炎症が主因とされ,東アジアに多いが,HP感染の減少に伴い世界的に発生が減少している。欧米を中心に,食道・胃接合部の腺癌発生が増加している。
早期胃癌では,病変内にしばしば消化性潰瘍を生じて空腹時心窩部痛を呈するので,これを見逃さないよう内視鏡検査を行う。胃壁内のがん深達度(T)が治療法選択に重要であり,内視鏡,超音波内視鏡,CTなどを総合してこれを診断する。術前のリンパ節転移診断は精度が低い。転移診断はCTが中心であり,FDG-PET検査の感度は高くない。進行癌の腹膜転移診断には審査腹腔鏡が有用である。
根治をめざす胃癌治療の基本は,適切な範囲の胃の切除とリンパ節郭清である。D2リンパ節郭清を伴う2/3以上の胃切除を「定型手術」と呼び,術前診断に応じてこれを縮小または拡大する。胃を切除すると多くの患者で栄養状態および生活の質が落ちるため,無駄な切除はできるだけ避けるよう計画する。転移の確率が低く根治の可能性の高い早期癌(T1)では,内視鏡的粘膜切除(ER)を含む切除の縮小と胃機能の温存をめざす。逆に局所進行癌では,化学療法との組み合わせを考慮して手術の計画をたてる。切除不能の転移を有する場合は,持続する出血や通過障害がない限り,胃を切除せずに化学療法を行う。非治癒となる胃切除は,これらの症状に対する姑息的切除にとどめる。
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