腸閉塞は,何らかの原因で腸管内容の通過が障害された状態と定義され,機械的腸閉塞(器質的通過障害あり)と機能的腸閉塞(器質的通過障害なし)に分類される。さらに発生原因により機械的腸閉塞は単純性(腸管血流障害あり)と複雑性(腸管血流障害なし)腸閉塞に,機能的腸閉塞は麻痺性(腸管の蠕動運動低下)と痙攣性(腸管の分節運動亢進)腸閉塞に分類される。
鑑別疾患として,急性腹症のすべての疾患が挙がる。急性虫垂炎,穿孔性腹膜炎,胆石胆囊炎,急性膵炎,子宮外妊娠などである。これらの疾患を念頭に置いて,問診で腹部手術既往や腸蠕動に関わる服薬歴などを聴取することが大切である。次に視診に加え,聴診,打診,触診,血液検査,単純X線撮影検査,さらには腸閉塞を疑った場合には,単純性か複雑性かの鑑別が重要になるため,CT検査や超音波検査が必要となる。
単純性腸閉塞では,腹痛症状は間欠的,腸雑音は亢進し金属性雑音を聴取し,腹部膨満は著明なことが多い。一方,絞扼性腸閉塞では,腹痛症状は急激かつ持続的な激痛で,腸雑音の亢進や腹部膨満所見は著明ではなく,筋性防御や限局した反跳痛を認めることが多い。
ヘルニア嵌頓も考慮に入れて鼠径部から診察し,直腸癌や癌性腹膜炎などの機械的単純性腸閉塞も念頭に直腸診も必要である。血液検査所見では,複雑性腸閉塞では白血球数,LDH,CPK,アシドーシス所見を認めることが多いとされる。
腹部単純X線撮影検査では,絞扼性腸閉塞は鏡面像を呈することが少なく,無ガスの場合もあるので,注意を要する。腹部超音波では,腸蠕動消失によるto-and-fro運動の消失やKerckring襞の不明瞭化,混濁腹水貯留所見が認められることが特徴である。腹部CT検査では,腸管壁の浮腫所見に加え,腸間膜の不明瞭化,門脈血症などを認めることもある。
術後癒着性腸閉塞であれば,大半の場合,保存的治療で改善が期待できる。腸閉塞の保存的治療の基本は,循環血液量減少に伴う脱水や電解質喪失と,bacterial translocation(BT)による敗血症の進行をきたす病態に対する治療となる。
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