発熱は在宅患者の急病として頻度が高い。
重症度評価と原因の鑑別が重要であり,臨時往診が望ましい。在宅患者は高齢かつ基礎疾患を持っていることが多く,状態が時々刻々と変化するため,治療開始後も重症度を評価し続け,急性期病院受診のタイミングを逸しないようにする。
高齢者は体温調節能が低下しており,38℃以上に発熱しにくいことに留意する。普段から体温をモニタリングし,平熱を把握しておき,そこからどの程度体温が上昇しているか評価する。また解熱鎮痛薬を常用している高齢者も多く,発熱がマスクされている場合もある。
認知機能低下を合併した場合,自覚症状の訴えに乏しく,「元気がなく寝てばかりいる」,「普段と様子が違う」という,いわゆるnot doing wellとして家族が気づく場合も多い。
バイタルサインおよび全身状態,特に頻脈(90回/分以上),頻呼吸(22回/分以上),血圧低下(収縮期血圧90mmHg以下),意識障害,倦怠感・食欲不振,悪寒戦慄の有無で総合的に重症度を評価する。
うつ熱をクーリングや飲水励行などにより除外した上で,炎症性か非炎症性にわけて考える。ただし,炎症は血液検査結果のみではなく臨床所見と合わせて評価する。在宅医療の現場では血液検査結果は直ちには判明せず,臨床所見として感染症が疑われれば,在宅高齢者は虚弱であり早期に抗菌薬投与をすべきである。
感染症と非感染症(膠原病・薬剤性・腫瘍熱など)にさらにわけて考える。区別困難なら感染症として治療し経過を評価してみても良い(診断的治療)。感染症が最も頻度が高く,以下に詳述する。
甲状腺機能亢進症・体温調節異常(脊髄損傷など)・悪性症候群など。
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