【質問者】
田中基嗣 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 新薬審査第一部
【AKIのリスク分析などで活用。今後わが国のデータベースの活躍にも期待】
腎領域において,医薬品の安全性が問題になるパターンは,大きく2つにわけられます。①ある薬剤の副作用として急性の(あるいは慢性の)腎機能低下が起きる場合,②ある薬剤を慢性腎臓病患者や透析患者に使用した結果,その薬剤の既知の(あるいは未知)の副作用が顕著に出る場合,です。
①副作用として急性(または慢性)の腎機能低下が起きる場合
急性の腎機能低下を起こす可能性がある薬剤としては,非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs),利尿薬,アンジオテンシン変換酵素阻害薬(angiotensin converting enzyme inhibitor:ACEI),アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(angiotensin Ⅱ receptor blocker:ARB)などが挙げられます。これらの薬を同時に処方したときに特に急性腎障害(acute kidney injury:AKI)のリスクが高まる可能性が,英国の大規模プライマリケアデータベースを用いた研究で示唆されています1)。
また,多くのカルシウム拮抗薬は肝臓の酵素であるシトクロムP450 3A4(CYP3A4)によって代謝されることから,CYP3A4阻害作用がある抗菌薬クラリスロマイシンと同時に処方すると,(カルシウム拮抗薬の血中濃度上昇による)低血圧によってAKIのリスクが高まる可能性が,カナダの大規模データベースを用いた研究で示唆されています2)。
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