急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は,2012年に改訂されたBerlin定義に基づいて診断される非特異的症候群であり,基礎病態(肺炎,敗血症,誤嚥が三大要因)に続発して発症する非心原性肺水腫病態である。原因病態として感染症が多いため,起炎病原体を予測した適切な抗菌薬の選択が予後を左右する。
Berlin定義の重症度に応じた治療介入の推奨があり,人工呼吸関連肺損傷予防のための肺保護的人工呼吸管理が強く推奨される。薬剤の推奨はないが,二次性に発症する多臓器不全への対策として,DICの評価と治療や,免疫調節作用を有する薬剤が期待される。2つの臨床病型(フェノタイプ)があることがわかってきており1),今後,このタイプの違いにより治療介入が変わっていく可能性がある。
ARDSの診断基準であるBerlin定義2)は,1週間以内の急性発症,胸部X線での両側性陰影,心不全や輸液負荷で説明できない呼吸不全であること,および呼気終末陽圧換気(positive end-expiratory pressure:PEEP)5cmH2O以上の人工呼吸管理下にて,重症度を3段階(軽症:200<PaO2/FiO2≦300,中等症:100<PaO2/FiO2≦200,重症:PaO2/FiO2≦100)に分類している。
3つの基本的方針は,①原因病態の治療,②人工呼吸関連肺損傷対策,そして③多臓器不全対策からなる。各種培養(血液,尿,痰など)や尿中抗原検査を迅速に提出し,empiricに抗菌薬治療を開始する必要がある。可能性のある起炎菌を推定し,抗菌薬の選択を誤らないことが原因病態の治療として重要である。わが国の3学会(日本呼吸器学会,日本呼吸療法医学会,日本集中治療医学会)合同診療ガイドライン3)が2016年に上梓され,人工呼吸管理に関する海外の3学会(米国胸部学会議,米国集中治療学会,欧州集中治療医学会)合同Clinical Practice Guideline4)が2017年に発表された。
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