心理的・社会的背景に何らかの環境要因が加わって発作性の頻呼吸が誘発され,PaCO2低下と呼吸性アルカローシスに基づく呼吸器・循環器・消化器・精神神経系などの多彩な症状を呈する一過性の病態である1)2)。本病態では一般的に器質的疾患はなく,主に心因的ストレスに基づく行動調節系の異常が関与していると考えられている2)。精神科的併存疾患では神経症性障害,ストレス関連症および身体表現性障害の頻度が高く,反復受診者では精神疾患を合併していることが多い2)。
呼吸困難,全身のしびれ感(特に四肢末端や口周囲),テタニー,めまい,頭痛,前胸部痛,動悸,不安・恐怖感,嘔気など多彩な症状を訴える2)。
過換気は多様な病態,すなわち呼吸器疾患(肺炎,間質性肺炎,肺血栓塞栓症,気管支喘息,気胸など),心血管障害(うっ血性心不全,低血圧など),代謝性疾患(糖尿病性ケトアシドーシス,肝不全など),脳神経疾患(脳腫瘍,てんかん発作など)等において認められる。若年における本症は診断が比較的容易ではあるが,これらを鑑別しながら診断を進めることが重要である1)2)。
心因性の過換気症候群の診断基準は確立されておらず,器質的疾患の除外診断となる2)。まずは基本通りバイタルサインをチェックし,患者と十分なコミュニケーションをとりながら身体所見(呼吸音・心音聴取など)をチェックする。SpO2は100%となることが多い。検査としては動脈血液ガス分析,心電図,胸部X線などを行う。過換気症候群では動脈血液ガス分析でPaCO2の低下とpHの上昇,PaO2の上昇を認めるが,A-aDO2の開大は認めない2)。心電図ではT波の陰転化,QT延長,洞性頻脈や上室性不整脈がみられることがある2)。胸部X線では異常が認められない。頻呼吸を呈しながらもSpO2正常~低下を示す場合には,これらの検査に加えて器質的疾患を鑑別できる検査を進めていく。
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