ファロー四徴(tetralogy of Fallot:TF)はチアノーゼ性先天性心疾患の中で最も頻度の高い疾患であり,1000人当たり0.2人の頻度で生じる。現在は修復術によりほとんどが成人するが,経年的に心臓関連のイベントが増え,術後25年で約10%,術後40年では70%に経験される。
成人を迎えたTFの問題は,①右室流出路,②右心室(RV),③不整脈,④大動脈拡大,の4つに大きく集約される。右室流出路の問題は右室流出路狭窄(RVOTS)と肺動脈弁閉鎖不全(PR)に,不整脈は心房性と心室性に分類できる。大動脈拡大は大動脈弁閉鎖不全(AR)が問題となる。
RVOTSやPRなどの解剖学的異常は,病態の進行に伴い運動耐容能の低下をまねく。不整脈の場合は動悸を感じるが,時に失神で発症し,稀に突然死という形をとる場合もある。聴診所見ではRVOTSで収縮期雑音,PRやARで拡張期雑音,心室機能低下ではⅢ音亢進を認める。
胸部X線写真(XP)をみると,RVOTSでは心胸郭比(CTR)は拡大しない場合が多いが,三尖弁閉鎖不全(TR)を伴う場合は右心房が拡大しCTRが拡大する。PRではRVの拡大で,時にTRを合併するためCTRは拡大する。
心電図(ECG)をみると,成人TF術後患者は洞機能不全から徐脈傾向で,Ⅰ度房室ブロックを呈し,完全右脚ブロック(CRBBB)のためQRS幅は拡大し,QT時間を延長している場合が多い。QRS幅はRV容積と関連し,180ms以上は心室頻拍(VT)発症の危険因子である。QRS fragmentationは致死的心室性不整脈の予測因子である。
ホルター心電図は不整脈の重症度評価には欠かせない。TF術後では加齢に伴い頻拍性不整脈が増加し,40~50歳以降に心房性頻拍(心房頻拍:AT,心房細動:AF,心房内回帰性頻拍:IART),VTともに増加する。
心エコー図は心機能評価に欠かせない。両心室の拡大,肥大や収縮性を評価する。連続ドプラー法でRVOTSの重症度,TR流速や左室短軸形態からRV圧を推定する。主肺動脈内の連続ドプラー法から拡張末期前方血流(EDFF)の有無を評価する。EDFF陽性はRV拘束性変化と関連するが,重症度や予後との関連は明確でない。
心肺運動負荷試験(CPX)はTF患者を含め,成人先天性心疾患患者の運動耐容能である最高酸素摂取量(peak VO2)と不整脈の評価に有用である。peak VO2低下は予後不良と密接に関連するため,治療介入の指標となる。
血液所見,心不全マーカーも有用である。B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)上昇は予後不良と関連し,右心不全が進行した場合は,NELD-XIスコアなどの肝腎機能障害は予後不良と関連する。
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