新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患による後遺症が世界中で問題になっている。その実態と治療、今後の課題について、コロナ後遺症の疫学調査と治療を行う国立国際医療研究センター国際感染症対策室医長の森岡慎一郎氏に聞いた。
国立国際医療研究センター国際感染症センターでは、COVID-19罹患後の患者526人を対象にアンケート調査を実施しました。その結果、半年後にも、回答者457人(回収率86.9%)の26.3%(120人)に、倦怠感や味覚・嗅覚異常など、何らかの症状を認めました。また、1年経っても8.8%に一つ以上の症状がありました。
一方、入院患者1276人を対象にした中国のコホート研究では、半年後に68%、1年経っても49%に何らかの症状があったと報告しています。
我々の調査では回答者の84.4%が軽症者(酸素投与を必要としない患者)だったこともあって、中国などのデータに比べると後遺症の割合は低かったのですが、COVID-19は軽症者でも長期間、生活の質が低下する症状が続くリスクのある病気だということです。
米国疾病管理予防センター(CDC)や、英国のNICEガイドラインでは、COVID-19罹患後4週間以上続く症状をロングCOVIDとしています。世界保健機関(WHO)は、21年10月、回復後に出た症状も含め、発症から3カ月以内に2カ月以上続く症状を後遺症としました。実際には、コロナ後遺症の定義は、国際的にコンセンサスが得られていない状況です。
我々の調査では、COVID-19の症状を①急性期症状、②急性期から遷延する症状、③回復後に出現する遅発性症状、に分類しました。②は主に倦怠感、味覚・嗅覚障害、咳嗽、呼吸困難などです。③はウイルス感染後疲労症候群とも呼ばれ、脱毛、集中力や記銘力の低下、うつなどの症状があります。
さらに、脳に霧がかかったようになって思考力や認知機能が低下するブレインフォグ(脳の霧)、頭痛、しびれなどの神経症状が続く人がいることも注目されています。