食道・胃静脈瘤は,肝硬変などの門脈圧亢進症を背景に,その門脈圧亢進状態を緩衝する側副血行路の一部として,食道や胃の壁内静脈が拡張することで形成される。
出血例では致命的となる。したがって,門脈圧亢進症患者では上部消化管内視鏡検査を行い,食道・胃静脈瘤の有無を確認する必要がある。腫瘤状や緊満感がある静脈瘤や静脈瘤上に発赤所見を認めるものは出血リスクが高く,予防治療の適応となる1)2)。また,CTなどで肝臓や脾臓を含めた門脈血行動態を把握しておくことも重要である。
出血例では内視鏡的止血術を施行する。食道静脈瘤出血では,出血点にリングをかける内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)を行う。胃静脈瘤出血では,出血点近傍にヒストアクリル®(n-buthyl-2-cyanoacrylate:NBCA)を局注する内視鏡的組織接着剤注入術を行う。
止血後は患者の肝予備能や腎機能を評価し,食道静脈瘤ではEVLか内視鏡的硬化療法(EIS)を,胃静脈瘤ではバルーン下逆行性経静脈的静脈瘤塞栓術(BRTO)か内視鏡的組織接着剤注入術を行う。
予防例に対する治療も内視鏡治療やIVRが中心である。食道静脈瘤ではEVLかEISを,胃静脈瘤ではBRTOか内視鏡的組織接着剤注入術を行う1)2)。
薬物療法では,食道静脈瘤出血例に対するオクトレオチド酢酸塩などの血管作動性薬の再出血予防効果,食道静脈瘤予防例に対する非選択的β遮断薬や一硝酸イソソルビドの門脈圧低下効果が知られている3)。また,静脈瘤治療後の潰瘍からの出血予防に酸分泌抑制薬が使われることが多い。しかし,食道・胃静脈瘤に厳密に保険適用があるものは,わが国ではバソプレシン程度であることに注意が必要である。
残り1,693文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する