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自己免疫性疾患による進行性線維化を伴う間質性肺疾患に対して抗線維化薬は第一選択薬となりうるか?

No.5101 (2022年01月29日発行) P.50

谷野功典 (福島県立医科大学医学部呼吸器内科学講座 准教授)

桑名正隆 (日本医科大学大学院医学研究科 アレルギー膠原病内科学分野教授)

登録日: 2022-02-01

最終更新日: 2022-01-25

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  • 全身性強皮症(systemic sclerosis:SSc)や関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)などの自己免疫性疾患に伴う間質性肺疾患の中で,進行性線維化を伴う間質性肺疾患(interstitial lung disease:ILD)がPF-ILD(progressive fibrosing interstitial lung disease)として臨床的に問題となっており,最近,抗線維化薬であるニンテダニブの有効性が報告されていますが,現在のところステロイドや免疫抑制薬使用後の第二選択の位置づけかと思います。しかし,肺以外の全身症状が強くないのにもかかわらず肺の線維化進行が著明な症例も見受けられますが,このような症例に対する抗線維化薬の第一選択薬としての可能性についてご教示下さい。
    日本医科大学・桑名正隆先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    谷野功典 福島県立医科大学医学部呼吸器内科学講座 准教授


    【回答】

     【抗炎症・免疫抑制薬の先行投与が原則,進行リスクの高い場合は抗線維化薬との初期併用を考慮する】

    ILDの中で,進行性の肺の線維化により呼吸器症状が悪化し,呼吸機能と健康関連生活の質の低下を伴い死亡に至るフェノタイプを,進行性線維化を伴うILD(PF-ILD)と呼んでいます。特発性肺線維症をプロトタイプとしますが,特発性間質性肺炎,職業環境性(過敏性肺炎,じん肺),膠原病を含めた自己免疫性など多彩な疾患の中にPF-ILDがみられます。PF-ILDの共通病態として,肺のダメージが契機となる,原疾患や誘因とは無関係の自己継続性の線維化プロセスが想定され,それを標的としたニンテダニブなど抗線維化薬が基礎疾患,病理・形態パターンにかかわらず進行を抑制する効果が無作為化比較試験で示されています。

    PF-ILDの基準として呼吸散能,画像,自覚症状の組み合わせによる疾患進行の評価が用いられていますが,前提として「医師により適切と考えられた疾患管理を行ったにもかかわらず」と規定されています1)。そのため,膠原病に伴うILDでは,基礎疾患の中心的病態である免疫,炎症の制御を行った上でのPF-ILDの評価が前提となります。実際に,膠原病に伴うILDの病理組織では,特発性と異なりリンパ濾胞形成や細気管支炎などが高頻度にみられます。

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