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好酸球性肺炎[私の治療]

No.5104 (2022年02月19日発行) P.38

妹尾 賢 (岡山大学大学院医歯薬学総合研究科血液・腫瘍・呼吸器・アレルギー内科学)

宮原信明 (岡山大学学術研究院保健学域検査技術科学分野生体情報科学領域教授)

登録日: 2022-02-17

最終更新日: 2022-02-15

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  • 好酸球性肺炎は,肺の間質および実質に好酸球が浸潤する疾患の総称である。発症の原因が薬剤,真菌,寄生虫など明らかな場合もあるが,原因がはっきりしない特発性のものもあり,本稿では後者を扱う。特発性は急性と慢性にわけられるが,両者の臨床像は大きく異なっており,別の疾患として扱われる。
    急性好酸球性肺炎は1週間以内の急性の経過で発症し,わが国では喫煙との関連が示唆される報告が多い。慢性好酸球性肺炎は,典型例では月単位の経過で咳嗽,発熱などの症状が出現し,多くの例でアトピー素因がある。

    ▶診断のポイント

    【急性】

    1週間以内の急性経過で発熱や呼吸困難を認め,呼吸不全を呈する。発症1カ月以内に喫煙を開始または再開していることが多く,また喫煙本数の増加がきっかけとなることもあるため,喫煙歴の詳細な聴取が重要となる。最近では加熱式たばこや電子たばこが誘因の報告もみられる。多くの症例でアトピー素因はみられない。

    梢血好酸球は特に発症早期には正常であり,発症1週間程度遅れて増加してくる。受診時点では末梢血好酸球数が正常であることが多く,注意が必要である。画像的には両肺野のびまん性のすりガラス影,浸潤影を認め,さらに小葉間隔壁の肥厚を伴う。しばしば胸水貯留も認める1)。気管支肺胞洗浄液中の好酸球は25%以上に上昇しており,診断に有用である。

    感染症,肺水腫,急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などとの鑑別が問題となることがある。

    【慢性】

    湿性咳嗽,発熱,呼吸困難,体重減少,盗汗などの症状が,月単位の経過で出現する。急性好酸球性肺炎と異なり,アトピー素因を背景に持つ症例が多い。

    末梢血では好酸球数上昇がみられ,炎症反応上昇もみられる。背景にアトピー素因を持つ症例が多く,IgE値の上昇もみられる。胸部単純X線写真では末梢優位の浸潤影を認め,「逆肺水腫像」とも呼ばれる。胸部CTでは胸膜直下優位で斑状に非区域性の斑状影・浸潤影を認める。急性好酸球性肺炎と異なり,胸膜病変や胸水を伴う症例は少ない1)。気管支肺胞洗浄液(BALF)中の好酸球増多が診断に有用であり,カットオフ値は診断基準によって異なるが,多くの症例で25%以上である。

    鑑別疾患として,薬剤性肺炎,真菌感染,寄生虫感染,その他の間質性肺疾患などの可能性は念頭に置く必要がある。また,肺外病変を認める場合は,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)や好酸球増多症候群(HES)の可能性を考える。

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