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肺胞蛋白症[私の治療]

No.5105 (2022年02月26日発行) P.44

鈴木拓児 (千葉大学大学院医学研究院呼吸器内科学教授)

登録日: 2022-03-01

最終更新日: 2022-02-21

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  • 肺胞蛋白症(pulmonary alveolar proteinosis:PAP)は,肺の末梢気腔内に肺サーファクタント由来物質が異常に貯留し呼吸不全に至る希少な疾患群である。原因により,①抗GM-CSF自己抗体による自己免疫性肺胞蛋白症(autoimmune PAP),②GM-CSF受容体遺伝子やサーファクタント関連遺伝子の変異による遺伝性(先天性)肺胞蛋白症〔hereditary(congenital) PAP〕,③骨髄異形成症候群などの血液疾患や悪性腫瘍や粉塵吸入などの基礎疾患に合併する続発性肺胞蛋白症(secondary PAP),および④未分類(原因不明)肺胞蛋白症,に分類され,成人発症例では①が90%以上を占める。①および②は指定難病である。わが国の自己免疫性肺胞蛋白症の罹患率は1.65/100万人,有病率は26.6/100万人,男女比は2:1,診断時年齢中央値は約50歳である。

    ▶診断のポイント

    症状としては咳嗽や呼吸困難を主訴とすることが多いが,無症状で画像検査により発見されることもある。画像所見の割に症状は比較的軽微であることがある。自己免疫性肺胞蛋白症の発症は緩徐であることが多く,一部に徐々に自然軽快する例がある。一方で呼吸不全が進行する例,死亡例もあるので慎重に治療を行う。肺高分解能CTで,地図状に分布するマスクメロンの皮様所見(crazy-paving appearance)および,すりガラス様陰影を両側びまん性に呈することが多い。気管支肺胞洗浄(BAL)液は白濁の外観(米のとぎ汁様,ミルク様)を呈し,病理・細胞学的所見では好酸性,顆粒状のPAS染色陽性な無構造物質の沈着および泡沫マクロファージ(foamy macrophage)が観察される。血清検査ではKL-6,CEA,SP-D,SP-A,LDHが高値を示す。

    肺胞蛋白症の存在診断後に,自己免疫性肺胞蛋白症であるか,続発性肺胞蛋白症であるか,遺伝性肺胞蛋白症の可能性があるかどうかしっかりと鑑別診断を行う。自己免疫性肺胞蛋白症では,血清中の「抗GM-CSF自己抗体」が陽性であり,検査は診断に必須である。現在はエスアールエル社にて検査可能である。続発性肺胞蛋白症は何らかの基礎疾患(血液疾患,感染症,自己免疫疾患,粉塵など)に伴って発症する肺胞蛋白症である。その基礎疾患の中では血液疾患に伴うものが大部分を占め,さらにその半数以上で骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome:MDS)が認められ,続発性肺胞蛋白症の発症の有無がMDSの予後に影響を与える。血清抗GM-CSF自己抗体陰性で,肺胞蛋白症に関連する基礎疾患のない患者ではGM-CSF受容体遺伝子(CSF2RA,CSF2RB),サーファクタント関連遺伝子としてSFTPB(SP-B),SFTPC(SP-C),ABCA3,NKX2.1(TTF1)の遺伝子変異の検索が遺伝性/先天性肺胞蛋白症の診断に有用である。

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