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肺血栓塞栓症[私の治療]

No.5107 (2022年03月12日発行) P.36

守尾嘉晃 (国立病院機構東京病院呼吸器センター部長/肺循環喀血センターセンター長)

登録日: 2022-03-10

最終更新日: 2022-03-08

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  • 肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism:PTE)は,肺動脈が血栓塞栓子によって閉塞し,急性または慢性の肺循環障害を呈する病態である。PTEと深部静脈血栓症(deep venous thrombosis:DVT)は一連の病態であり,静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)と総称される。急性PTE(acute PTE:APTE)は,主に下肢または骨盤内の静脈由来(90%)の血栓で発症し,ショック症例では死亡率30%の致死的経過がありうる。6カ月以上の抗凝固療法で肺循環動態の異常が残存する病態は,慢性PTE(chronic PTE:CPTE)である。APTE生存例やCPTE例に慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension:CTEPH)が存在しうる。CTEPHは公費負担対象の指定難病である。
    なお,CTEPHに対してウプトラビ(セレキシパグ)が2021年6月に新規治療薬として承認され,内科治療の拡充が期待される。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    呼吸困難,胸痛,失神などがあるが,非特異的症状である。原因不明の呼吸困難,低酸素血症,ショックを認めた場合,本症を鑑別診断に含める。

    【検査】

    APTEが疑われる場合,D-ダイマーを測定し,造影CTで血栓塞栓病変を捜索する。DVTも同時に探索する。心エコーで右心負荷を観察し左心系疾患を鑑別する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    急性期は抗凝固療法が基本である。ショック症例に対して昇圧薬や酸素投与とともに,血栓溶解療法,カテーテル治療,外科的血栓摘除術を行う。心停止例では経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support:PCPS)を使用する。リスクレベルを層別して治療方針を決定する。心停止やショック症例は高リスク群,非ショック症例は簡易版肺塞栓症重症度スコア(pulmonary embolism severity index:PESI)を用いて中リスク群と低リスク群に分類する。中リスク群では,CTや心エコーで右心機能障害を確認し,BNPとtroponinを測定して,さらに中(高)リスク群と中(低)リスク群に分類する。

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