【通常の胃底腺ポリープのがん化は稀。内視鏡所見についていくつかの報告例はあるが,PPI投与に伴い増大したポリープとの鑑別が問題となる】
まず,①がん化の頻度ですが,家族性大腸腺腫症に伴う胃底腺ポリープのがん化は多いのですが,散発性胃底腺ポリープ(通常の胃底腺ポリープ)のがん化は稀です。
なお,胃底腺ポリープにがんが合併した報告1)2)はありますが,Kawaseらの報告例はH. pylori陽性症例であり1),Togoらの報告例2)は胃底腺ポリープとの合併が多いと報告されているラズベリー様腺窩上皮型腺癌3)と思われます。
ご質問頂きましたように,胃底腺ポリープは原則H. pylori陰性に認められる疾患であり,胃底腺ポリープに合併する胃底腺型胃癌,胃底腺粘膜型胃癌,ラズベリー様腺窩上皮型腺癌に関しては,今後必ず病理医と一緒に検討していく必要があると思われます。
次に,②特徴的な内視鏡所見ですが,Kawaseらの報告例1)は,表面は平滑であるが中心にくびれを有する非典型的なポリープであり,Togoらの報告例2)は,強い発赤を示す小顆粒が集簇した特徴的なポリープです。そのほか,胃底腺ポリープに合併した胃底腺型胃癌の報告4)では,10mm大の凹凸を伴う表面不整なポリープです。
現在問題となるのは,プロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)投与に伴い増大したポリープ5)との鑑別になります。良性ポリープの場合には,原則PPI休薬にて縮小します。しかし,PPIを休薬してもポリープが不変または増大したり,さらに形態の表面不整などを認めたりした場合には,診断的治療にて,内視鏡的切除を考慮する必要があると思います。
【文献】
1)Kawase R, et al:Clin J Gastroenterol. 2009;2 (4):279-83.
2)Togo K, et al:World J Gastroenterol. 2016;22 (40):9028-34.
3)Shibagaki K, et al:Endosc Int Open. 2019;7 (6):E784-91.
4)上田裕之, 他:胃と腸. 2014;49(6):921-5.
5)Hongo M, et al:J Gastroenterol. 2010;45(6): 618-24.
【回答者】
河合 隆 東京医科大学消化器内視鏡学主任教授