先天性甲状腺機能低下症(congenital hypothyroidism:CH)は,原発性と中枢性に大別される。現在,すべての自治体で実施されている濾紙血TSHを用いた新生児マススクリーニング(newborn screening:NBS)で原発性CHを発見することが可能である。一方,中枢性CHの発見にはFT4の同時測定を要し,一部の自治体のみで実施されている。原発性CHは,胎生期または周産期に生じた甲状腺の形態または機能異常による先天的な甲状腺ホルモン分泌不全の総称と定義され,多様な病因を有する。中枢性CHは視床下部―下垂体性の甲状腺機能低下症であるが,TSH単独欠損は少なく,複合型下垂体前葉機能低下症の一部であることが多い。いずれも甲状腺機能低下症が明らかであれば,速やかな治療開始を要する。
本稿では通常のNBSで発見される原発性CHを中心に述べる。
上述のように,原発性CHの多くはNBSを契機に発見される。濾紙血TSHが高値であれば精密検査となり,血清でのTSHがNBS同様に高値であれば,臨床症状や画像検査所見(甲状腺超音波検査や大腿骨遠位端骨核)と合わせて総合的に原発性CHとしての治療を検討する。その際,確認すべき臨床症状のチェックリストとして,①遷延性黄疸,②便秘,③臍ヘルニア,④体重増加不良,⑤皮膚乾燥,⑥不活発,⑦巨舌,⑧嗄声,⑨四肢冷感,⑩浮腫,⑪小泉門開大,⑫甲状腺腫,が重要である。
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