SUMMARY
リハビリテーション処方は単なるオーダーではなく,リハビリテーション医療におけるスタッフ間のコミュニケーションツールである。処方にあたりスタッフが必要としている情報やリスク管理について述べる。
KEYWORD
リスク管理
診療において起こりうる有害事象を前もって予測し回避するための行動。特にリハビリテーションは,医師ではなくスタッフが医療行為を直接行うことが多いため,リスクを予測するだけでなく,スタッフ間で共有することが重要である。
PROFILE
2014年高知大学医学部卒業。初期研修修了後,京都岡本記念病院・亀田総合病院にて勤務。2020年より2021年12月まで京都岡本記念病院・静清リハビリテーション病院にて勤務。リハビリテーション科専門医。
POLICY・座右の銘
医師も健康第一
リハビリテーション(以下リハ)処方とはそもそも何だろうか?まず制度上の位置づけについて,リハ自体は「診療の補助として理学療法又は作業療法もしくは言語訓練等を行うこと」(理学療法士及び作業療法士法第15条第1項および言語聴覚士法第42条より)とされている。つまりリハは診療の一部であり,これらの法的根拠を担保するために医師の処方が必要である。またリハ処方箋には,保険算定のための病名(疾患別リハの適応があるもの),疾患の発症日,処方内容の記載が必要である(表1)。
これらの記載事項は必要最低限のものだが,リハ処方箋にはそのほかにコミュニケーションツールとしての重要な役割がある。リハ医療は医師のみで成立しえないため,処方にあたっては主治医としての治療方針をスタッフに明確に伝え共有する必要がある。どんなゴールに向けて,どのようなリハを,どのくらいの期間行うのか,訓練にあたりどのようなリスクがあるかを伝えるべきである。これは後述するリスク管理にも繋がる。セラピストは自分の専門領域において患者を評価し訓練の目標設定をするが,治療方針の全体像がわからないとめざすべきゴールがあいまいになってしまう。
筆者は普段,急性期病院で他科から依頼を受け診察,リハ処方を行っている立場だが,主治医の意向や方針が具体的に伝わる依頼はとてもありがたく感じる。たとえADLなどリハビリテーションに直接的に関わる目標の記載がなくとも,入院期間の目安や疾患の予後予測などが記載してあれば,リハ方針を決める際に参考にできる。