左室収縮力の低下した心不全(HFrEF)では、生命予後の改善もさることながら、運動耐容能の改善もQOL向上の観点から重要となる。そこでオメカムティブ・メカルビル―直接的な強心作用を有する薬剤として初めてHFrEF例の長期転帰を改善―に期待が寄せられたが、有用性の証明には至らなかった。4月2日からワシントンD.C.で開催された米国心臓病学会(ACC)学術集会において、デューク大学(米国)のG. Michael Felker氏が、ランダム化試験(RCT)“METEORIC-HF”の結果として報告した。
METEORIC-HF試験の対象は、忍容最大用量の心不全治療薬服用下で左室駆出率(EF)「<35%」のNYHA分類「Ⅱ-Ⅲ」度心不全、かつ運動耐容能低下を認めた276例である。発作性心房細動/粗動例などは除外されている。
平均年齢は64歳、EF平均は27%、NT-proBNP濃度は平均1320pg/mLだった。また心不全治療としては、96%がβ遮断薬、95%がRAS-iを服用(うち70%はARNi)、さらにSGLT2阻害薬も18%で服用されていた。
これら276例は、オメカムティブ・メカルビル(25→50mg×2/日)群(185例)とプラセボ群(91例)にランダム化され、二重盲検法で20週間追跡された。
その結果、1次評価項目である20週間後の「最高酸素摂取量」は、オメカムティブ・メカルビル群で試験開始時の「14.7」mL/kg/分から「0.2」の低下、プラセボ群では「14.9」から「0.2」の増加を認め、変動幅に群間差はなかった。2次評価項目の「1日身体活動量(アクティグラフ評価)」なども同様で、オメカムティブ・メカルビルによる改善は認められなかった。
なお、有害事象発現にも差はなく、「心不全増悪」、「死亡」、「脳卒中」の発生率は両群とも低く、同等だった。
この結果に対しパネリストからは、同薬によるHFrEF例「心不全増悪・心血管系死亡」抑制を認めたGALACTIC-HF試験に比べ、軽症例が多いとの指摘があった。重症例に限れば運動耐容能改善が期待できるのではないかとの指摘である。これに対しFelker氏は、本試験は登録患者が比較的少数であるため、サブグループ解析から得るものは少ないとの見解を示した(報告ではNYHA分類、EF、NT-proBNPの高低で分けた解析も示されたが、重症例で有効という傾向は見られず)。
本試験はCytokineticsとAmgen、Servier社から資金提供を受けて実施された。