レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系抑制薬(RAAS-i)は、収縮能低下心不全(HFrEF)治療には必須だが、高カリウム(K)血症が問題となる。4月2日からワシントンD.C.で開催された米国心臓病学会(ACC)学術集会では、新規K吸着剤パチロマー(Patiromer)を用いたランダム化試験(RCT)“DIAMOND”が、ベイラー大学(米国)のJaved Butler氏により報告された。当初の1次評価項目である心血管系(CV)有効性は、新型コロナの影響で2次評価項目に変更されたが、傾向すら認められなかった。
DIAMOND試験の対象は、①RAAS-i服用下で高K血症を呈している、または②過去に高K血症でRAAS-i減量・中止が必要となった、「左室駆出率(EF)≦40%」のNYHA分類「Ⅱ-Ⅳ」度心不全1195例である。
これら1195例はまず全例がパチロマーを最長12週間服用し、その期間中にRAAS-iは標準用量の50%超、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は50mg/日超を目標に増量を試み、成功例が次のランダム化に進んだ。
その結果、1038例(87%)が導入期間を完遂し、878例(73%)が上記RAAS-i増量に成功した。
パチロマー併用でRAAS-i増量に成功したこれら878例は、「パチロマー」継続群と「プラセボ」への切り替え群にランダム化され、二重盲検法で追跡された(各群439例ずつ)。
878例の平均年齢は67歳、EF平均値は34%、NYHA分類Ⅱ度とⅢ度がそれぞれほぼ半数を占めていた。心不全治療薬は、RAAS-i、β遮断薬とも両群ほぼ100%が服用していた。
1次評価項目は、当初「CV死亡・CV入院」だったが、新型コロナの影響を受け、「試験終了時までの血清K値変化」に変更された。ただし「CV死亡」、「CV入院」も2次評価項目の1つとして残されている。
その結果、血清K値は、プラセボ群でランダム化直後に著明上昇したのに対し、パチロマー群では大きな変動はなく、ランダム化後54週間の平均K値はパチロマー群で0.10mEq/Lの有意低値となった。また高K血症(>5.5mEq/L)出現のハザード比(HR)も、パチロマー群で0.63(95%信頼区間[CI]:0.45-0.87)の有意低値だった。
そのような血清K濃度への効果もあり、パチロマー群ではRAAS-i「標準用量の50%以上維持」が可能だった例が有意(P=0.015)に多かったが、プラセボ群との差は5%のみだった(92 vs. 87%)。一方RAAS-i中止率は、パチロマー群(2.7%)とプラセボ群(3.6%)間に有意差を認めなかった。
そしてCV転帰だが、十分な症例数がないため有意差とはならないものの、パチロマー群におけるHRは、CV死亡:1.31(95%CI:0.65-2.63)[4.1 vs. 3.2%]、初回CV入院:1.34(0.73-2.47)[5.5 vs. 4.1%]、初回心不全入院:1.08(0.54-2.19)[3.6 vs. 3.4%]―と高い傾向が認められた。
パネルディスカッションでは、プラセボ群における高K血症の低頻度が指摘された。Butler氏は、パチロマーで高K血症をコントロールできた例のみがランダム化されているので、相対的に高K血症低リスク群が対象となっていた可能性があるとした。
また、血清K値の群間差が小さい理由も問われたが、Butler氏から明確な回答はなかった。
本試験はVifor Pharmaの資金提供を受け実施された。