昨年の米国心臓協会(AHA)学術集会では、SGLT2阻害薬による急性心不全(AHF)転帰改善作用が、ランダム化試験(RCT)“EMPULSE”で報告され注目を集めた[https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=18445]。4月2日から開催された米国心臓病学会(ACC)学術集会ではさらに、SGLT2阻害薬による短期のQOLスコア改善が、ミズーリ大学(米国)のMikhail Kosiborod氏により報告された。
EMPULSE試験の対象は、入院後に安定した急性心不全530例である。日本を含むアジア、欧米の118施設から登録された。
これら530例は、SGLT2阻害薬群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で90日間観察された。入院からランダム化までの期間中央値は3日である。
今回の解析対象はこのうち、QOL指標であるKCCQデータの揃った526例となった。
平均年齢は68.5歳。「左室駆出率≦40%」は67%、62%がNYHA分類「Ⅱ度以上」で、67%が慢性心不全の急性増悪だった。また、2型糖尿病合併率は45%だった。
QOLに関する事前設定評価項目は、KCCQ総合症状スコア(TSS)である。試験開始後90日間の変化を比較した。
その結果、試験開始時に平均40.8ポイントだったKCCQ-TSSは90日後、 SGLT2阻害薬では36.2ポイント増加し、プラセボ群の31.7ポイント増加を4.45ポイント有意(P=0.03)に上回った。またSGLT2阻害薬群におけるKCCQ-TSSの有意改善は、試験開始15日後の時点ですでに認められた(群間差:5.35ポイント)。
KCCQスコアは、KCCQ全般スコア(OSS)5点以上の変動が、臨床的に意味を持つとされている。そこで後付解析で検討した本研究90日後のKCCQ-OSSを比較すると、SGLT2阻害薬群では有意(P=0.03)ながら、プラセボ群との差は4.40ポイントだった。
またSGLT2阻害薬群におけるKCCQ-TSS改善には有意に近い(P=0.05)地域差があり、アジア地域ではSGLT2阻害薬群で9.94ポイントの低下傾向(95%信頼区間:-2.52~22.40)を認めた。
本試験はBoehringer IngelheimとEli Lillyから資金提供を受けて実施された。また報告と同時に、Circulation誌Webサイトで公開された。