肺結核は結核菌感染によって生じる肺の炎症性疾患で,空気感染し,感染症法2類に分類されている。内因性再燃によって発症する。高齢者が過半数を占める。
2週間以上の咳嗽や発熱を生じた場合,胸部画像検査を行い,喀痰検査を3回,日を変えて行う。
原則として,日本結核・非結核性抗酸菌症学会が示している医療の基準1)に従う。肺結核の治療は世界的に標準治療が定められており,合併症や薬剤の相互作用・副作用について考慮し,治療方針とする。また,各保健所に置かれた感染症診査協議会が,主治医からの診断書に示された治療内容が適切かどうか診査を行うので,その指示に従う。
標準治療は,治療歴や薬剤耐性の有無で異なる。初回治療で薬剤耐性が投与薬剤にない場合は,初期2カ月を導入期とし,イソニコチン酸ヒドラジド(isoniazid:INH),リファンピシン(rifampicin:RFP),ピラジナミド(pyrazinamide:PZA)にエタンブトール(ethambutol:EB)もしくはストレプトマイシン(streptomycin:SM)のいずれかを選択し,4剤投与を行う。2カ月以降は維持期としてINHとRFPを4カ月用いる。
成人の場合の投与量は,INHは5mg/kg/日(上限300mg/body/日),RFPは10mg/kg/日(上限600mg/body/日),PZAは25mg/kg/日(上限1500mg/body/日),EBは15mg/kg/日(初期2カ月は20mg/kgでも可能,初期2カ月での上限は1000mg/body/日,それ以降は750mg/body/日),SMは15mg/kg/日(上限は,連日投与では750mg/body/日で初期2カ月のみ可能,週3回投与の場合は1g/body/日が可能)である。
維持期の継続期間は,前述したように標準治療では4カ月であるが,初期2カ月治療終了時の培養結果(液体培地であれば6週後,固形培地であれば8週後)が陽性であれば,3カ月延長するべきである。また,免疫抑制を生じる薬剤を併用した場合,結核性髄膜炎や粟粒結核など重篤な播種型結核の場合,広汎空洞型肺結核など重篤な肺結核の場合,コントロール不良な糖尿病,血液透析などの免疫を低下させる病態を伴ったときには,治療期間を3カ月延長するが,これらの要因が2つあった場合でも治療延長期間は3カ月である。
PZAを用いず,INH,RFPを中心とした3薬剤投与を標準治療とした時期もあったが,世界的な趨勢に倣い,現在はPZAを含む4薬剤で開始する治療を標準とする。しかし,PZAにアレルギー歴を有する場合,肝不全,非代償性肝硬変,C型慢性肝炎活動期では,PZA投与は禁忌となる。全身状態が悪化している患者や80歳以上の高齢者の場合は,全身状態を評価してPZA投与を決定する。また,高尿酸血症を生じるため,痛風発作や尿管結石を有する患者ではPZAの投与を慎重に行う。わが国では妊婦への投与は勧めてはいない。
結核菌には薬剤に耐性を有する場合がある。耐性頻度はSMで最も高率であり,INH,EB,RFPと続く2)。初回治療時にSMとEBの選択肢があるが,筋肉注射であること,耐性の問題,副作用に第8脳神経の障害(難聴,めまい等)が認められることから,EBが選択されることが多い。
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