(質問者:千葉県 K)
わが国の薬剤添付文書と同様に欧米各国のガイドラインでもNSAIDs内服時は空腹を避けることが推奨されていますが,実はNSAIDsの空腹時服用と食後服用で胃腸傷害を比較した臨床研究は存在しません。しかし,動物実験では胃潰瘍に代表されるNSAIDs起因性胃粘膜傷害は食後投与よりも空腹時投与時に明らかに強く引き起こされるというエビデンスが存在します。そのため,現在なされている食後内服の推奨の根拠は,主に動物実験の研究結果,NSAIDsの薬物特性に基づいていると推測されます。
NSAIDsによる胃腸傷害には大きくわけてプロスタグランジン産生抑制作用と,粘膜上皮を直接傷害する直接作用の2つの機序が関与していると考えられています。この2つの機序のうち,直接作用が胃内に食物がある状態では軽減されると考えられています。すなわち,ほとんどのNSAIDsは酸性であるために酸性条件下では非イオン化し,消化管粘膜の細胞膜を通過することにより,細胞傷害をより強く引き起こしますが,食後の場合には食物の影響により胃内pHの上昇が起こるため,細胞中への移行が妨げられ直接作用が減弱すると考えられています。
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