肺の表面を覆う胸膜に炎症が生じた状態を指す。滲出液が肺内から胸膜を通り抜けて胸腔内へ移動し,胸水が生じるために胸痛や呼吸困難などの症状が現れる。原因としては感染症や悪性腫瘍が多い。肺炎随伴性胸水のほか,わが国ではがん性胸膜炎と結核性胸膜炎が多く,全体の60~70%を占める1)。ほかに全身性エリテマトーデス(SLE)など膠原病に伴う胸膜炎も知られている。
一般に感染症の場合は胸痛を伴う発熱,悪性腫瘍の場合は呼吸困難が主な症状となり,診断の一助となる。胸水穿刺や胸膜生検による検体採取によって,微生物学的検査や病理学的検査が行われることで原因を含む確定診断につながる。胸水では色調のほか,Lightの基準による漏出性・滲出性の鑑別2),ADAの上昇(結核性),細胞診や組織診における異形細胞(がん性)や好酸球(気胸関連や寄生虫性)の検出は診断の決め手となりうる。培養検査での一般細菌や抗酸菌検出も同様である。
治療はできるだけ早期に原因を同定し,適切な薬剤(抗菌薬や抗結核薬,抗癌剤)を投与することとドレナージを施行することがポイントとなる。すなわち,治療の中心は原因に対する治療であり,感染症の場合は原因病原体に有効な抗菌薬を,悪性腫瘍の場合は有効な抗癌剤を投与する。胸水量が多い場合は胸水穿刺を併用し,がん性胸膜炎の場合はさらに胸膜癒着術を行う。膠原病関連であれば,ステロイドなど免疫調節薬の投与が必要となる。
細菌性・肺炎随伴性胸膜炎ではβ-ラクタマーゼ阻害薬を配合したペニシリン系薬が基本となり,重症の場合はカルバペネム系薬などを用いる。組織移行性がよく,嫌気性菌をカバーするレスピラトリーキノロン(結核の否定が必要)やβ-ラクタム系薬にメトロニダゾール併用も有効である。
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