近年、糖代謝異常と非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の関連に注目が集まっている。NAFLDと診断される肝細胞脂肪蓄積量は現在、日米とも「5%以上」とされているが、糖代謝異常の観点から見た場合、この値は適切なのか―。そのような疑問を投げかけるデータが、6月3日から米国ニューオーリンズで開催中の米国糖尿病学会(ADA)学術集会で発表された。報告者は、Minh-Da Le氏(テキサス大学サウスウェスタン医療センター、米国)。
同氏が解析したのは、大規模住民コホートである“Dallas Heart Study”参加者中、MRスペクトロスコピーで肝脂肪が評価されていた2287名である(18~65歳、平均44歳)。肝臓の脂肪含有率で五分位に分け、各種代謝パラメーターを横断的に比較した。
その結果、肝脂肪含有率第2五分位(1.81~2.86%)群においてすでに、HOMA-IR中央値は、正常値上限を超える「2.1」(四分位範囲[IQR]:1.2-3.4)だった。そして第3、第4、最高五分位と肝脂肪が増えるに従い、HOMA-IR中央値は2.7、3.6、5.1と増加する有意な傾向が認められた(最低群では1.6[1.1-2.9])。
ただし、この集団のBMI平均値は29.2kg/m2であり、肥満例が相当数含まれている可能性がある。そこで「BMI<30kg/m2」の1455名(BMI中央値:25.5[IQR:23.2-27.8]) のみで検討した。しかし、やはり同様に、肝脂肪含有率第2五分位(1.53~2.36%)群のHOMA-IR中央値は正常上限を超えていた(1.7[1.1-2.6])。
以上よりLe氏は、現在は「正常」と考えられている程度の肝脂肪沈着時からすでに、代謝異常は始まっていると結論した。ROC曲線を用いた検討は行っていないが、肝脂肪含有率「2%」前後が、糖代謝異常の観点から見た正常上限ではないかという。
本研究には、申告すべき利益相反はないとされた。