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特集:副作用ゼロをめざす ステロイド使用時の「7つの習慣」

No.5128 (2022年08月06日発行) P.18

須田万勢 (諏訪中央病院リウマチ・膠原病内科医長/聖路加国際病院Immuno-Rheumatology Center非常勤医師/茅野市役所DX推進室DX推進幹)

登録日: 2022-08-05

最終更新日: 2022-08-03

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2009年,東京大学医学部を7年かけて卒業,うち一年は休学して東洋医学と山登りに明け暮れる。卒後は諏訪中央病院で総合診療,家庭医療(いちおう専門医)を志すも,2014年に縁あって聖路加国際病院にて膠原病研修を開始(いちおう専門医・指導医),2019年より現職。リウマチ・膠原病領域の「痛み」に対して,一方では薬物治療で炎症性疼痛を抑えつつ,もう一方ではファシアハイドロリリースで非炎症性疼痛にも対応する,独自の診療スタイルで治療成績を向上させている。 2018年には生活指導が高じて,「養生」の実践を広める一般社団法人 統合医療チームJINを立ち上げ,講演会,Youtube活動も開始。 2022年からは茅野市デジタル田園健康特区のアーキテクト(構想責任者)に就任,茅野市役所DX推進室に週2日勤務し,市のデータ利活用型ヘルスケア事業をリードしている。最近の悩みは,「自分はいったい何屋さんなのか?」
著書:「痛み探偵の事件簿」(日本医事新報社)
Youtube:「Drマシューのほろ酔い養生

1 ステロイド使用時の「7つの習慣」
ステロイドを使用する際には「哲学」とそれを支える「習慣」が必要である。
下記の「7つの習慣」について,なるべく実践に即して解説していく。
習慣1. 診断をつけてから(あるいは絞ってから)使う
習慣2. 重症臓器病変には十分な量を投与し,その後速やかに減量に入る
習慣3. 自然免疫系と獲得免疫系の異常の割合を考える
習慣4. 免疫抑制薬(steroid sparing agent)を併用する
習慣5. 投与開始時に減量のスケジュールを決めておく
習慣6. 投与開始からの時期を考慮して副作用対策をする
習慣7. 患者に副作用を避ける/対処するための説明をする

2 ステロイド使用の実際
実際の疾患で,筆者がどのようにステロイド(やその他の免疫抑制薬)を使用しているかを紹介する。
例1. 「獲得免疫系」が強く働く疾患:ループス腎炎
・寛解導入のステロイドはしっかり使い,免疫抑制薬でリンパ球を集中して抑え,10mg/日以下までは速やかにステロイドを減量,以後の寛解維持期には慎重に減量。
例2. 「自然免疫系」が強く働く疾患:痛風
・ステロイドの少〜中用量の短期使用や関節内注射で「ささっと」落ち着け,寛解後は投薬なしか,再発性であればコルヒチンで維持。
例3. 「自然免疫系」と「獲得免疫系」が同じくらい働く疾患:関節リウマチ
・DMARDsが奏効するまでの期間のブリッジとしてステロイドは使用可能だが,数カ月以内に中止をめざす。隔日ステロイドが有用,関節内注射も有用。

3 ステロイドの「未来」
国際的な傾向として,ステロイドの使用はどんどん「短期間」「少量」の方向に動いている。
最近登場したいくつかの代表的な臨床試験のデザインを紹介する。
例1. 巨細胞性動脈炎に対してトシリズマブを使用してステロイドを26週で終了したGiACTA
例2. ANCA関連血管炎に対してアバコパンを使用して,ステロイドを使用せず寛解導入を図ったADOVOCATE試験
例3. ループス腎炎に対してボクロスポリンを使用して,ステロイド中用量で寛解導入し,16週まででほぼ中止したAURORA1試験
それでもステロイドは,「(効果が)強い,安い,(発現が)早い」の3拍子揃っためずらしい薬であり,「ステロイドを使わなくてすむ場合にはなるべく使わない」という大前提の上で,①DMARDsを開始してからその効果が発現するまでのbridging therapyとして,②(金銭的理由や副作用などで)他薬の選択肢が少ない場合にやむをえずの代替手段として,最小量のステロイドを使うことは許容されるだろう。全身投与の副作用を軽減するために,局所治療としての関節内注射や,重症臓器病変がない場合の隔日投与を積極的に活用したい。

伝えたいこと
・ステロイドは「諸刃の剣」と言われるように,患者を救う「聖剣」であると同時に地獄に突き落とす「魔剣」でもある。
・その剣を操る剣士の哲学は“maximize good, minimize bad”(できるだけ良い面を引き出し,できるだけ悪い面を出さないこと)である。
・ステロイド使用の「7つの習慣」を実践し,治療が難しい患者を上手に「着地」させたときには,努力が報われた達成感が得られるだろう。

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