近年、「摂食時間制限(Time-Restricted Eating)」による減量作用に期待が集まっている。小規模研究のメタ解析の結果、特段の摂食カロリー制限なしで、1日の摂食時間制限による減量作用が認められた[Moon S, et al. 2020.]。しかし一転、本年4月、N Engl J Med誌に中国から報告された、139例を対象とするランダム化比較試験“TREATY”は、「厳格なカロリー制限」への「摂食時間制限」追加による、減量作用増強を否定した[Lie D, et al. 2022.]。「摂食時間制限」は減量に無効なのだろうか?
留意すべきは、TREATY試験に対し「厳格カロリー制限」が「摂食時間制限」の効果をマスクしていた可能性が指摘されている点である[Laferrère B, et al. 2022.]。そして「厳格なカロリー制限」を伴わない場合、「摂食時間制限」はやはり、減量に有用である可能性が示された。8月8日にJAMA Intern Med誌ウェブサイトで先行公開されたランダム化比較試験を紹介したい[Jamshed H, et al. 2022.]。
本試験の対象は、米国アラバマ大学肥満外来を受診中の90名。糖尿病例は除外されている。平均年齢は43歳、女性が80%を占め、BMI平均値は39.6kg/m2だった。
これら90名は、全員が「カロリー制限指導」(「厳格カロリー制限」よりゆるい)を受けた上で、摂食時間を「朝7時~昼3時」に限定する「摂食時間(前倒し)制限」群と、好きな時間に摂食できる「非制限」群にランダム化された(各群45名ずつ)。
その結果、14週間後、「摂食時間制限」群では、試験開始前に比べ6.3kgの有意減量を認めた(P<0.001)。「非制限」群(4.0kg減量)と比べても、2.3kgの有意減量だった(P=0.002)。なお、先述のTREATY試験では、「非制限」群でも試験開始12週間後の時点で、8.0kg近い減量が観察されている。
一方、脂肪量は「非制限」群に比べ1.4kgの減少傾向にとどまり(P=0.09)、原著者らが期待していた「摂食時間制限」による「脂肪の選択的減少」は認められなかった(除脂肪体重は0.1kgの減少傾向)。脂肪量減少が有意差に至らなかった理由を、検出力不足に求めている。
さて「摂食時間制限」による減量の機序を探ると、自己申告の「身体活動」や「エネルギー摂取量」、「摂取栄養素バランス」には、両群間で差を認めなかった。ただし、減量モデルを用いた計算によれば、「摂食時間制限」群で「非制限」群に比べ1日摂取カロリーは、「214kcal」のみだが有意低値となっていた(P=0.04)。
興味深いことに「摂食時間制限」群では、POMS(感情プロフィール検査)評価による「活気・活力」、「疲労・無気力」、「抑うつ・落ち込み」のいずれも、「非制限」群に比べ改善した。
そのためか「摂食時間制限」群の41%は、試験終了後も摂食時間制限を続けると回答している。
原著者らは、次のステップとして300例程度を対象にしたランダム化比較試験が必要だと記している。