心血管系(CV)疾患1次予防例では、「スタチン+降圧薬(含レニン・アンジオテンシン系阻害薬)配合剤」と「アスピリン」の2剤併用による、プラセボに勝るCVイベント抑制作用が、ランダム化比較試験(RCT)"TIPS-3"にて報告されている[Yusaf S, et al. 2021.]。では2次予防における有用性はどうか。
この点を検討すべく、心筋梗塞例を対象に、「アスピリン・スタチン・ACE阻害薬」配合剤の有用性を、通常の薬剤治療と比較するRCT"SECURE"が実施され、ポジティブな結果が得られた。バルセロナ(スペイン)で開催された欧州心臓病学会(ESC)にて26日、Valentin Fuster氏(マウントサイナイ・ヘルスシステム、米国)が報告した。
SECURE試験の解析対象は、欧州7カ国から登録された、65歳以上の心筋梗塞亜急性期2466例である。 心筋梗塞発症からの日数は中央値で8日、平均年齢は76歳、31%が女性、99%が白人だった。
当初2499例が「アスピリン・スタチン・ACE阻害薬」の3剤配合「ポリピル服用」群と、これら3剤を別個に用いる「通常薬剤服用」群にランダム化され、脱落例を除いた2466例が解析対象となった。追跡期間中央値は3年間で、盲検化はされていない。
その結果、「ポリピル服用」群では、「通常薬剤服用」群に比べ、1次評価項目である「CV死亡・心筋梗塞・脳卒中・緊急冠血行再建術」が有意に少なくなっていた(9.5 vs. 12.7%、ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.60-0.96)。 両群の発生率曲線は、試験開始直後から乖離を始め、差は試験終了時まで開き続けた。「より長期に観察すれば、さらに大きな有効性が確認できただろう」とFuster氏はコメントしている。
また2次評価項目ではあるが、「冠血行再建術」を外した「CV死亡・心筋梗塞・脳卒中」のみで比較しても、「ポリピル服用」群における有意なリスク低下を認めた(HR:0.70、95%CI:0.54-0.90)。
これらのうち、リスク減少が最も著明だったのは「CV死亡」だった(同:0.67、0.47-0.97)。 一方、「総死亡」リスクは両群間に差を認めず(9.3 vs. 9.5%、同:0.97、0.75-1.25)、その背景には「ポリピル服用」群における非CV死亡の増加傾向があった(5.4 vs. 3.7%、同:1.42、0.97-2.07)。
さて、「ポリピル服用」群における、上記1、2次評価項目減少の要因を探ると、同群における有意に良好な「服薬アドヒアランス」が浮かび上がった。 しかし、それにもかかわらず、観察期間中のLDL-C値、収縮期血圧、拡張期血圧は、両群間に有意差を認めなかった。
この点につき、座長のStephan Achenbach氏(フリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュルンベルク、ドイツ)は、「通常薬剤服用」群のほうがより高用量・高力価スタチンを服用していた患者が多かった点に注目し、にもかかわらずLDL-C平均値が「ポリピル服用」群と同等だとすれば、「通常薬剤服用」群におけるLDL-C値変動がより大きかったのではないかと考察。「LDL-C値変動の増加は、CVイベントリスクだったはずだ」と述べた。確かにRCT"IDEAL"の追加解析では、心筋梗塞後LDL-C値変動「大」に伴うCVイベントリスク増加が報告されている[Bangalore S, et al. 2017.]。
本試験は、European Union Horizon 2020(EUにおける研究費提供プログラム)から、資金提供を受けて実施された。 また報告と同時に、N Engl J Med誌ウェブサイトで論文も公開された[Castellano JM, et al. 2022.]。