(質問者:埼玉県 I)
本稿では,女子陸上選手のセパレーツ型運動着のメリットについて考えます。セパレーツ型運動着を着用したとき,腰腹部の皮膚が露出する面積は,体表面積の約10~15%に相当すると考えられます。一般に衣服の着用により皮膚を覆う被覆面積(X:%)が多くなるほど,熱抵抗値(Y:clo)は高くなることが知られています。両者の関係についてサーマルマネキンを用いた研究1)によれば,Y=0.014X-0.14の関係が得られています。すなわち,被覆面積が10~15%減ると0.14~0.21cloも熱抵抗が低くなるので熱放散は促進されます。
中東ではよくあるWBGT(湿球黒球温)=30℃環境下で,顔・手・足以外の皮膚をすべて覆う女子回教徒選手用の運動服(Islamic athletic clothing:IC)と被覆面積の少ない通常のサッカー服(soccer uniform:SC)着用による生理・心理的な影響を,45分間の運動中に測定・比較した研究報告があります2)。ICのほうがSCより衣服内温湿度は有意に高い状態が続き,厳しい環境となることが判明しました。その結果,温熱感,発汗感,皮膚濡れ感,衣服の湿潤感および不快感はいずれもICで有意に高く,発汗量はICで有意に多く(IC:1.4L/時 vs. SC:1.2L/時),主観的運動強度も有意にきつく感じることが示されました。
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