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糖尿病性腎臓病(DKD)[私の治療]

No.5137 (2022年10月08日発行) P.45

岡田浩一 (埼玉医科大学病院腎臓内科教授)

登録日: 2022-10-08

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  • 古典的な糖尿病性腎症は,正常アルブミン尿である腎症前期(第1期)から微量アルブミン尿を伴う早期腎症期(第2期)を経て,アルブミン尿が顕性化して徐々にGFRが低下する顕性腎症期(第3期),GFRが30mL/分/1.73m2未満の腎不全期(第4期)と経過し,腎代替療法の導入とともに透析期(第5期)に到達する。近年,顕性アルブミン尿を伴わずに腎機能が低下する2型糖尿病の患者数が増加してきたため,古典的な糖尿病性腎症に加えて,この非典型的な腎症を含む包括的な病名として糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease:DKD)が使用されるようになった。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    アルブミン尿を伴う場合には,第3期から第4期にかけて,顕性アルブミン尿が増加してネフローゼ症候群に達すると顔面や下腿の浮腫を伴うようになり,また腎機能低下が進行して第5期に近づくと尿毒症症状を認める。顕性アルブミン尿を伴わない場合には経過が緩やかで,第5期に近づき尿毒症を呈するまでは明らかな症状を認めない。いずれも経過中に高血圧を認め,また心血管系合併症のハイリスクであり,併発した場合には障害部位に関連した症状を呈する。

    【検査所見】

    糖尿病に関連する検査所見の異常に加え,尿アルブミン定量により微量アルブミン尿が検出されると第2期と判定されるため,早期診断には定期的な検尿が重要となる。その後,アルブミン尿が顕性化し,急速に増加するのと並行して血清クレアチニン値が上昇しはじめるものと,アルブミン尿は顕性化せずに血清クレアチニン値が徐々に増加するものがある。後者は微量アルブミン尿を呈さないものもあり,検尿では早期診断が困難なため,定期的な血清クレアチニン値の測定が重要となる。さらに糖尿病患者において高度な糸球体性血尿や急激な腎機能の低下を認めるなど,DKDとして稀な経過を示す場合には腎生検の適応となる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    DKDは糖尿病の腎合併症であることから,まずは発症予防が重要であり,また微量アルブミン尿が陽性となっても(第2期),減少させることが可能とされている。そのためには,十分な集学的治療が重要とされており,まず禁煙,運動と体重の適正化(BMI<25)を,そして血糖,血圧と脂質の管理を行う。血糖の管理についてはメトホルミンもしくはSGLT2阻害薬を,血圧の管理には食塩摂取制限(<6g/日)とともにRA系阻害薬を,また脂質の管理についてはスタチンを第一選択薬として,それぞれHbA1c<7%,BP<130/80mmHgとLDL-C<120mg/dLをめざす。それぞれの目標をさらに厳しく設定することで1),より臓器合併症の発症を抑制できることも示されている一方,75歳を超える高齢者では認知・身体能力に応じて設定目標を緩めることにも配慮する。

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