近年、様々な心腎保護作用が注目されているSGLT2阻害薬だが、今度は「ドライアイ」に対する有用性が示唆された。JAMA Netw Open誌、9月22日掲載論文から紹介したい[Su YC, et al. 2022.]。ドライアイは、糖尿病例の2割弱[Moss SE, et al. 2000.]、予備群まで入れると5割強[Hom M, et al. 2006.]が罹患していると報告されている疾患である。
解析対象となったのは、SGLT2阻害薬、あるいはGLP-1受容体作動薬(GLP-1-RA)で治療を開始した2型糖尿病1万2350例。台湾の多施設電子カルテデータベースから抽出された。1万1022例がSGLT2阻害薬を服用し、1328例はGLP-1-RAを使用していた。 これらから傾向スコアで背景因子を調整した1万1115例を抽出し(IPTW法)、その後のドライアイ発症リスクを比較した。
平均年齢は60歳弱、約55%が男性だった。また眼疾患合併率に差はなかった。
解析の結果、平均3.9年間のドライアイ発症率はSGLT2阻害薬群で「0.9%/年」となり、GLP-1-RA群(1.15%/年)に比べハザード比は0.78(95%信頼区間:0.68-0.89)の有意低値となった。両群の発生率曲線は観察直後から乖離を始め、差は観察終了時まで広がり続けた。
なお、HbA1c、推算糸球体濾過率(eGFR)、尿中アルブミン/クレアチニン比は、両群間に差を認めなかった。
SGLT2阻害薬によるドライアイ抑制の作用機序だが、原著者らは両群のHbA1cに差がない以上、血糖管理が影響したとは考えられないとし、眼球表面の「乾燥」と「炎症」が互いを惹起・増強する「悪循環」[Pflugfelder SC, et al. 2017.]に対し、SGLT2阻害薬の抗炎症作用[Prattichizzo F, et al. 2018.]が抑制的に働いた可能性を指摘した。
その上で、血糖降下薬選択にあたっては、眼疾患への影響も評価すべきではないかと問いかけている。
本研究は、製薬会社からの資金提供を受けていない。