リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica:PMR)は,高齢者(通常60歳以上)に生じる上下肢帯筋の疼痛を主症状とする疾患で,肩峰下や三角筋下,大腿骨大転子下の滑液包炎を高頻度に認める。時に,巨細胞性動脈炎(giant cell arteritis:GCA)を合併,悪性腫瘍が併存することがあるので,注意が必要である。
亜急性に発症する頸部,肩,腰,大腿など四肢近位部(近位筋)の疼痛を主訴とする原因不明の炎症性疾患である。発熱,易疲労感,抑うつ症状,体重減少を伴うこともある。炎症反応高値のほかは,診断に特異的なマーカーはない。感染症(感染性心内膜炎,結核,深部感染症など),他のリウマチ性疾患,悪性腫瘍などを除外することが必要である。側頭部の新たに発症した頭痛や視力低下・眼前暗黒感がある場合は,GCAの合併を疑う。
炎症反応(赤沈,CRP)は高値,リウマトイド因子(RF)や抗環状シトルリン化ペプチド(CCP)抗体は陰性,クレアチンキナーゼ(CK)は正常である。高齢発症関節リウマチ,偽痛風,心内膜炎などと鑑別することが重要である。
臨床経過,所見等よりPMRが疑われた際は,まず,胸部X線,胸部から骨盤までのCTなどで感染症や悪性腫瘍を除外する。眼症状(視力低下,一過性黒内障など),側頭部の頭痛や発熱・炎症反応が高い場合は,GCAを疑う。症状が強くCTなどでの検索が速やかに施行できない場合は,臨床経過・身体所見,一般検査所見などより,可能な限り感染症,他の疾患を除外した上でステロイドによる治療を先行させ,並行して悪性腫瘍の検索を行うこともある。
ステロイドは通常著効する。著効しない場合は,PMRの診断が正しいかを再度確認する。
ステロイドの漸減により再燃することがあり,しばしばステロイドの中止は困難である。免疫抑制薬の併用を試みる。
GCAの合併があるときは,GCAの治療に従う。
できる限り治療前に全身的な悪性疾患の検索を行う。ただし,症状が強い場合は,PMRとしての治療を先行させる場合がある。
ステロイド減量困難例への対応は,ステロイドの減量中止をめざすが,可能な範囲で免疫抑制薬を併用して極力必要最小限の使用にとどめる。
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