同じ心房細動(AF)でも、「発作性」に比べ「持続性」や「永続性」では、「脳卒中」や「死亡」のリスクが有意に高くなる[ENGAGE-AF]。そのため「発作性」AFから「持続性」への進展を抑制できれば、それらイベントも減少すると考えられる。では進展抑制にはアブレーションと薬剤治療のいずれが有用か―。
この問いに答えるべく“PROGRESSIVE-AF”試験が実施され、アブレーションの優位性が確認された。11月5日からシカゴ(米国)で開催された米国心臓協会(AHA)学術集会におけるJason G. Andrade氏(モントリオール心臓研究所、カナダ)の報告を中心に紹介したい。
なお本試験はランダム化比較試験“EARLY-AF”の副次的解析である。
本研究の対象は、アブレーションの適応がある診断から2年以内の「非永続性」AFである。抗不整脈薬は「使用歴なし」に加え、「6カ月未満の治療域以下用量服用」、「6カ月以上以前の服用歴あり」、「治療域用量を使用中だが4週間以内」であれば参加できた。
303例が登録され、平均年齢は58歳、男性が3分の2を占めた。合併症は少なく「AF進展リスクの低い」集団だとAndrade氏は評した。AF診断からの中央値は1年、発作性AFがおよそ95%を占め、約4割に電気的除細動の既往があった。また29%にⅠ、Ⅲ群抗不整脈薬使用歴があった。
これら303例はループ心電計を植え込みの上、クライオアブレーション群と抗不整脈薬群にランダム化され、非盲検で3年間観察された。
抗不整脈薬の選択は試験参加施設に任され、3カ月を目安に最大用量を目指した。最も頻用されたのはフレカイニドで、試験開始時の65.8%、終了時の49.0%が服用していた。用量中央値はいずれも200mg/日である。
また30.9%が試験期間中に、抗不整脈薬の服用を中止していた(大半はアブレーションにクロスオーバー。1次評価項目達成例は皆無)。
その結果、3年間の1次評価項目「持続性心房細動発現」(植え込み式ループ心電計評価)は、アブレーション群1.9%、抗不整脈薬群7.4%となり、アブレーション群におけるハザード比(HR)は0.25(95%信頼区間[CI]:0.09-0.70)と有意に低かった。
またQOLは、AFEQT(AF特化QOL)評価、EQ-5D(健康関連QOL)評価のいずれもアブレーション群において、臨床的に意味のある幅の有意改善が、試験開始1年後以降一貫して認められた。
なお 心房頻脈性不整脈も、アブレーション群で有意に抑制されていた(HR:0.49、95%CI:0.37-0.65、9.3 vs. 42.7%)。
またアブレーション群では「有害事象」も有意に少なく(11.0 vs. 23.5%、HR:0.47、95%CI:0.28-0.79)、重篤な有害事象に限っても同傾向だった(4.5 vs. 10.1%、0.45、0.19-1.05)。
この結果に対し、指定討論者のCarina Blomström Lundqvist氏(ウプサラ大学、スウェーデン)は、本試験における「AF進展」が「AF持続時間」のみを基準としている点に着目(原則7日以上持続で「持続性」AF)。持続時間のみの判断では発作性AF進展の多くを見逃している可能性を指摘し、「AF負荷(burden)」(測定時間中に占めるAF発現時間の割合)を用いた「進展」評価の必要性を主張した。たとえば発症後早期の発作性AF 323例を観察したAF-RISK研究では、「AF進展」のうち持続時間で把握できたのは3割のみであり、「AF負荷10%以上増加」という基準で検出された進展が7割を占めたという。
本試験はCardiac Arrhythmia Network of CanadaとMedtronic、Baylis Medicalから資金提供を受けた。
また論文は報告と同時に、“EARLY-AF”の名でN Engl J Med誌サイトにて公開された。なお心房性頻拍再発抑制の結果も、同じく“EARLY-AF”名で同誌サイトに公開されている。