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周術期血糖管理 【自動的に血糖管理を行う人工膵臓が使用しやすくなった】

No.4820 (2016年09月10日発行) P.52

田村貴彦 (高知大学麻酔科学・集中治療 医学)

横山正尚 (高知大学麻酔科学・集中治療 医学教授)

登録日: 2016-10-13

最終更新日: 2016-10-19

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手術患者や重症患者はストレス反応により高血糖状態になる。このようなストレス性高血糖は感染症発症率や死亡率の上昇に関連している。

2001年にvan den Bergheらによって,血糖値を80~110mg/dLに管理する強化インスリン療法が外科系集中治療患者の死亡率を低下させるという報告1)がなされた。このことから,厳格な血糖管理の有効性が大きく注目されるようになった。しかしその後,強化インスリン療法は低血糖発生率を上昇させ,かえって患者死亡率を上昇させるとの報告がなされ,現在では低血糖を回避するために,目標血糖値をよりゆるくした144~180mg/dLでの管理が推奨されるようになっている。また,高血糖だけでなく血糖値の変動も患者予後に影響を与えるとの報告がなされ,血糖変動を抑える管理も求められている。しかし,臨床現場で安全かつ安定した血糖値を維持するためには,頻回の採血ときめ細かなインスリンの投与が必要で,医療従事者の仕事量を増やすことが問題となる。

この問題を解決できるものに人工膵臓がある。人工膵臓は,血糖値の連続モニタリングであると同時に,インスリンとブドウ糖の投与量を自動的に調節し,血糖値を設定範囲内にコントロールすることを可能とする。16年4月,診療報酬改定で人工膵臓の診療報酬が変更され,より使用しやすくなったことから,今後さらに周術期での人工膵臓の臨床使用が広がると思われる。

【文献】

1) van den Berghe G, et al:N Engl J Med. 2001;345 (19):1359-67.

【解説】

田村貴彦,横山正尚 高知大学麻酔科学・集中治療 医学 教授

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