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世界医師会長が「健康の社会的決定要因」で講演 【健康格差は社会の不平等表す】

No.4820 (2016年09月10日発行) P.10

登録日: 2016-10-13

最終更新日: 2016-10-19

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サー・マイケル・マーモット世界医師会長(写真)が来日し、5日、日本医師会館で健康の社会的決定要因(SDH)をテーマに講演した。健康格差の是正に向けて社会保障を充実する必要性を訴えた。

マーモット氏は世界の疫学データから、所得と健康の関係をグラフ化すると、低所得ほど不健康の割合が上昇する“勾配”が生じることを紹介。さらに、子供時代の経済状況が高齢期の健康にまで影響を及ぼすことも示した。

女性の健康問題にも言及し、「女性の健康度上昇に最も貢献する要因は教育だ。教育は乳幼児死亡率も引き下げる」と強調。女性の教育レベルが高くなるとパートナーから暴力を受ける割合が減ることも紹介した。

一方、国のGDP比と平均余命の関係を分析すると、「貧しい国々の収入が上がると平均余命も上がるが、1人当たり年1万2000〜3000ドルの水準まで行くと、それ以上の国と差がなくなる。経済成長は必ずしも健康を約束しない」と指摘した。さらに、各国国内の健康格差は国によって度合いが異なることを説明し、「健康格差は社会の不平等を表している」と強調。「健康格差を是正する方法は明らか。どれだけ社会保障に国の予算を使うかだ」と述べ、具体的な介入方法として、①子供たちに最良のスタートを切らせる、②教育を提供する、③公平な雇用を提供する、④生活水準を保持する、⑤健康で持続可能な地域社会をつくる、⑥疾病予防を強化する─を挙げ、SDHの問題に対して「Do something, Do more, Do better」と呼びかけた。

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