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慢性閉塞性肺疾患(COPD)[私の治療]

No.5145 (2022年12月03日発行) P.40

室 繁郎 (奈良県立医科大学呼吸器内科学講座教授)

登録日: 2022-12-06

最終更新日: 2022-11-30

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  • 慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)は,現喫煙者・喫煙経験者に生じる閉塞性障害(呼出障害)をきたす疾患である。また,閉塞性障害を伴う肺気腫,慢性気管支炎,細気管支炎を含有する疾患概念でもある。労作時の息切れが主症状だが,痰・咳を伴うこともある。気道感染(風邪症候群,上気道炎など)を契機に数日で呼吸状態・全身状態が悪化することがあり,増悪と呼ばれる。中年期以降に多く,症状が軽微である場合に未診断例も多い。

    ▶診断のポイント

    40歳以上で喫煙歴があれば疑う。スパイロメトリーで閉塞性障害が証明され,胸部画像や問診で他疾患が除外できれば診断できる。息切れが主症状であるが,症状が乏しいこともある。現喫煙者では咳嗽・喀痰を訴えることも多いが,禁煙してなお咳嗽が続くときには,胃食道逆流症(GERD),後鼻漏,気管支喘息,気管支拡張症などの他疾患の除外が必要である。一般に,罹患すると呼吸機能低下が速やかであるので,早期診断・介入が重要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    【安定期治療】

    禁煙指導は必須で,安定期の息切れ・身体活動性低下の程度と過去の増悪頻度を勘案して治療方針を決定する。薬物療法の中心は吸入薬であり,長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬(LAMA)と長時間作用性β2刺激薬(LABA)の単剤あるいはそれらの配合薬を使用することで,症状の軽減と増悪抑制効果が期待できる。ドライパウダー製剤で口喝などの副作用が生じた場合は,ミスト製剤に変更すると軽減することが多い。

    LAMA+LABA配合薬を吸入中にもかかわらず,1年間に複数回増悪する際には,誤嚥,GERDの合併,夜間の睡眠薬服用などのリスク因子を除外した上で,吸入ステロイド製剤(ICS)の併用を検討する。ICSは喘息要素を持つ症例や,末梢血好酸球増多(300/µL以上)の症例には有効性が期待できるが,肺炎を含む気道感染発症リスクを上昇させる。

    呼吸リハビリテーションはCOPDにきわめて有効であるが,resourceが限られている。日常診療では,個々の生活習慣に即した適切な身体活動性の維持への指導が重要である。

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