心房粗動は頻脈性上室性不整脈のひとつである。通常,心房内のリエントリー性興奮波が三尖弁周囲を旋回することで成立する。基礎心疾患がある患者で発現しやすいが,加齢などの要因も関与する。心房細動と混在することが多い。脳塞栓症を合併することがある。稀ではあるが,突然死の原因となる。
診断は心電図でなされる。持続性/慢性の心房粗動は12誘導心電図で診断できるが,発作性/一過性の心房粗動は長時間心電図(ホルター心電図やイベント心電図)でしか診断できない。
通常型心房粗動では,12誘導心電図の下壁誘導で,正常P波が消失し単形性の連続した迅速なノコギリ波様の波形(鋸歯状波)を認める。このような鋸歯状波を認めないものを非通常型心房粗動と呼ぶ。
重症度は心房と心室の伝導比によって規定される。粗動波の周期は240~300拍/分である。伝導比が2:1までは,心拍数が150拍 /分を超えることはないため,症状はあっても重症化することはない。しかし伝導比が1:1となると,心拍数が300拍/分近くまで上昇するため,持続すれば致死性になる。
治療法には薬物治療とカテーテルアブレーションがある。心房粗動については,症状があり,患者が希望すればアブレーションを第一選択治療としてよい。比較的安全に行うことができ,成功率は90~95%以上と高い。
症状がなく,患者が希望せず,あるいは高齢や合併疾患などでアブレーションが行えない場合は,薬物治療を選択する。その場合,まずは心房細動と同様に抗凝固療法の必要性を吟味する。ついで心拍数調節療法を行う。効果はあまり期待できないが,洞調律維持療法を選択することがある。
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