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産褥乳腺炎[私の治療]

No.5146 (2022年12月10日発行) P.50

小谷友美 (名古屋大学医学部附属病院総合周産期母子医療センター生殖周産期部門病院教授)

登録日: 2022-12-07

最終更新日: 2022-12-06

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  • 授乳トラブルは,メンタルヘルスや児との愛着形成にも影響を及ぼす。産後3日目以降に認める乳汁分泌増加に伴い,乳管閉塞や開通不全により,乳汁がうっ滞することで発症する。重症化予防の対策が重要である。2018年度より「乳腺炎重症化予防ケア・指導料」が保険収載となっている。

    ▶診断のポイント

    授乳中,多くは産後6週以内に発症する。主訴は,乳房における,しこり,疼痛,腫脹,発赤,熱感などや,悪寒,37.5℃以上の発熱などの全身症状がある。感染性乳腺炎は,発熱が1日以上続く場合に疑い,乳汁検査や血液検査を実施し,白血球数などで評価する。また,発熱が3日以上続く場合には,膿瘍形成を疑い,超音波検査で診断する。炎症を伴わないしこりは乳癌など腫瘍病変,発熱を認めるが,乳房に所見がない場合には子宮内膜炎などの他の感染症が鑑別診断として挙げられる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    「乳腺炎ケアガイドライン2020」1)に沿って,助産師とともに,セルフケアおよび授乳継続への支援を実施していく。

    うっ滞性乳腺炎→感染性乳腺炎→膿瘍形成の進行度のうち,どの段階かを診断し,対処による改善の見通しについても考慮し,治療方針を組み立てていく。うっ滞性乳腺炎では,薬物療法は必要とせず,授乳法の助言やセルフケアの指導を提供する。症状が24時間以上改善を認めない場合あるいは改善しない可能性が高いと判断した場合には,感染性乳腺炎の進行を疑って,解熱鎮痛薬を処方する。それらの治療で軽快せず,症状出現後48時間以内に改善が認められない場合には,抗菌薬を処方する。これらの保存的治療に効果を示さず,症状出現後72時間以上経過している場合には,膿瘍形成を評価し,膿瘍を認めた場合には,外科的療法を実施する。

    どの段階においても,治療に並行して,本人の希望を尊重し,授乳継続を希望する場合には継続を支援する。希望しない場合には,授乳終了に向けた支援を行う。授乳の自己中断による病状悪化を回避するためにも,医師,助産師,薬剤師で連携を図る。ストレスや疲労はリスク因子であり,褥婦に寄り添う対応や育児支援の確保も重要と思われる。

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