痛風は,高尿酸血症の持続により関節組織内に析出・沈着した尿酸結晶が,物理的刺激や急激な尿酸値の変動などにより剝がれ落ち,炎症が惹起されることによって生じる。わが国には約100万人存在すると推測されている。生体においては,通常の条件下では尿酸は7.0mg/dL以下までは溶解することから,高尿酸血症は男女問わず血清尿酸値が7.0mg/dLを超える病態と定義され,腎負荷型(従来の産生過剰型と腎外排泄低下型,約1割),排泄低下型(約6割)および混合型(約3割)に分類される。
高尿酸血症のうち腎負荷型は尿中尿酸排泄亢進を伴い,排泄低下型は尿中尿酸排泄低下を伴う。随時の採血・採尿にてクレアチニンと尿酸を測定し,尿酸/クレアチニンクリアランス比や尿中尿酸/クレアチニン比を計算して病型を確認する。
高尿酸血症の治療はカロリー,アルコール,プリン体の制限を含めた生活習慣の修正を基本とする。痛風発作や痛風結節を有する場合は薬物治療を開始するが,発作の予兆がわかる患者には予兆時にコルヒチンを投与する。ただし,既に痛風発作を発症していると,コルヒチン投与の効果が十分に出ないことが多い。この場合には,非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)を十分量投与する。NSAIDsは初日に短期大量療法を行った後に常用量を投与する。効果が不十分な場合やNSAIDsが使用できない場合は,経口グルココルチコイドをプレドニゾロン換算20mg/日程度を目安として3~5日間投与する。グルココルチコイドは関節内投与や筋肉内投与も可能である。
発作が完全に寛解した後に尿酸降下薬を開始するが,投与中の痛風発作の再発を予防するために,コルヒチンカバー(コルヒチン0.5~1.0mg/日を3~6カ月間投与)も考慮する。痛風関節炎患者は血清尿酸値6.0mg/dL以下を目標にし,痛風結節患者ではより効率的な改善を期待して5.0mg/dL以下を目標にする。
痛風発作や痛風結節を伴わない無症候性高尿酸血症には,原則「6・7・8のルール」で対応する。つまり,血清尿酸値が7.0mg/dLを超えると高尿酸血症と診断され,腎障害,尿路結石などの合併症を有する患者では8.0mg/dL以上で尿酸降下薬の投与を考慮し,尿酸コントロールを行う場合は血清尿酸値6.0mg/dL以下を目標とする。合併症を有さない患者では,血清尿酸値9.0mg/dL以上から尿酸降下薬の投与を考慮する。なお,現行ガイドラインでは,腎障害合併高尿酸血症患者には腎保護を目的とした尿酸降下薬の投与が条件付きで推奨されているが,高血圧合併例や心不全合併例に対して生命予後や心血管病リスクの軽減を目的にした尿酸降下薬の投与は推奨されていない1)。高尿酸血症と各種合併症との関連には,血清尿酸値ではなく,細胞内の尿酸やキサンチン酸化還元酵素(xanthine oxidoreductase:XOR)活性亢進に伴う酸化ストレスなどの関与が推察されている2)。
尿酸降下薬は病型による選択を原則とし,腎負荷型にはXOR阻害作用のある尿酸生成抑制薬を,排泄低下型には近位尿細管のURAT1輸送体を介する尿酸再吸収を阻害する尿酸排泄促進薬を投与する。同薬剤使用時は,酸性尿(尿pH<6)にならないように必要に応じて酸性尿改善薬の併用を考慮する。また,尿路結石の既往・保有や中等度以上の腎機能障害がある場合は尿酸生成抑制薬を選択する。
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