株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

特集:見逃さない!便秘に隠れた重大疾患

No.5149 (2022年12月31日発行) P.18

小林健二 (市立大町総合病院消化器内科部長)

登録日: 2022-12-30

最終更新日: 2022-12-27

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

1988年信州大学医学部卒業。三井記念病院,Beth Israel Medical Center(現Mount Sinai Beth Israel),University Hospitals of Cleveland(現University Hospitals Case Medical Center)で研修後,東海大学,大船中央病院,亀田京橋クリニックなどを経て,2020年より現職。地方の医療機関で一人だけの消化器内科医として奮闘。著書に『極論で語る消化器内科』『消化器診療プラチナマニュアル』など。

1 便秘とは
「慢性便秘症診療ガイドライン2017」では,便秘を「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義している。つまり,排便回数の減少以外に,排便時の過度の怒責,残便感なども便秘に含まれる。「便秘症」とは,便秘による症状(代表例:腹痛,腹部膨満感,過度の怒責,残便感,直腸肛門の閉塞感など)が現れ,検査や治療を必要とする場合を指す。

2 便秘の分類
便秘は大きく急性便秘と慢性便秘にわけられる。一般に急性便秘は日から週の単位で発症する。一方,慢性便秘は数カ月以上に及ぶもので,特発性と続発性に大別される。特発性便秘は明らかな誘因がなく生じる便秘で,さらに腸管拡張を伴うものと伴わないものにわけられる。続発性便秘は薬剤の副作用として起きる薬剤性便秘,大腸癌などにより大腸に形態的変化をきたしたことにより生じる器質性便秘,腸管に形態的異常はないものの,糖尿病やパーキンソン病などにより生じる症候性便秘が含まれる。

3 便秘を訴える患者の病歴聴取で気をつけること
まず,患者が訴える便秘が具体的にどのような症状を指し,どのような症状に困っているのかを確認する。患者が困っている症状を確認することは,今後の治療方針を決定する上でも重要である。さらに,初療で重要なのは警告徴候がないかを把握することである。たとえば,血便や体重減少などの警告徴候がある場合は,便秘に隠れた重大な器質的疾患の可能性を考えて,その評価を優先させなければならない。便秘に関連した警告徴候として以下のものが挙げられる(一部身体所見,検査結果を含む)。

血便,意図しない体重減少,原因不明の鉄欠乏性貧血,突然または急性発症の排便習慣の変化,便柱狭小化,発熱,腹部腫瘤またはリンパ節腫脹,大腸癌の家族歴があるが年齢に応じた大腸癌スクリーニングを受けていない,症状の発症が50歳以上で年齢に応じた大腸癌スクリーニングを受けていない,など。

加えて,併存疾患と既往歴,服用薬,食事を含めた生活習慣を確認する。便秘,特に慢性便秘に関連して聞くべきこととして,発症時期,便秘薬を服用しない状態での排便頻度,以前の排便習慣,便秘薬を服用しない状態での便の性状,排便時の怒責・自己摘便・残便感の有無,便秘薬使用の有無,使用する場合にはその種類と使用頻度,過去の大腸内視鏡検査歴とその結果などがある。排便時の肛門の閉塞感,自己摘便,残便感は排便障害を示唆する症状である。

4 便秘の患者の身体診察
腹部診察では,腹部膨満,手術痕,圧痛,腫瘤がないかを確認する。また,病歴から排便障害が疑われる場合には,必ず直腸診を行う。

5 内視鏡検査の適応と注意点
前述した警告徴候がある場合は,大腸内視鏡検査の適応がある。最近急に排便習慣の変化が出現した症例で,S状結腸から直腸の高度狭窄が疑われる場合には,まずCTで狭窄の度合いを評価する。通常の前処置が危険であると判断されれば,前処置なし,あるいは浣腸のみで病変部を評価する。判断に迷うときには,事前に検査を行う専門医に相談する。

6 続発性便秘の原因
医原性である薬剤性便秘の可能性を考えて病歴を聴取すると同時に,大腸癌をはじめとする器質性便秘を示唆する警告徴候がないかに注目して病歴聴取と身体診察を行う。これら2つが否定されたらそれ以外の原因を検索する。

プレミアム会員向けコンテンツです(最新の記事のみ無料会員も閲覧可)
→ログインした状態で続きを読む

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top