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特発性間質性肺炎(IIPs)・肺線維症[私の治療]

No.5157 (2023年02月25日発行) P.42

西岡安彦 (徳島大学大学院医歯薬学研究部呼吸器・膠原病内科学分野教授)

佐藤正大 (徳島大学大学院医歯薬学研究部呼吸器・膠原病内科学分野准教授)

登録日: 2023-02-27

最終更新日: 2023-02-21

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  • 広義の間質(肺胞隔壁,小葉間隔壁,胸膜直下および気管支や肺血管の壁)に炎症や線維化をきたす疾患を間質性肺疾患(interstitial lung disease:ILD)と言う。
    ILDは膠原病や放射線,薬剤,感染などを原因として起こりうるが,明確な原因を持たないものは特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias:IIPs)と呼ばれる。IIPsは組織型によりいくつかに分類され,その病態生理は型によって様々である。本稿では,IIPsの中でも疾患頻度が高い特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)について述べる。

    ▶診断のポイント

    IPFの診断には2018年に発表されたアルゴリズム1)を用いる。IPF特異的な症状はなく,乾性咳嗽,労作時呼吸困難を主症状とする。全体の3割程度にばち指を認める。血液検査では,血清KL-6,SP-D,SP-Aが診断のマーカーとして有用である。まず詳細な問診(環境曝露や職業歴,服薬歴など)と身体診察(膠原病を示唆する症状や身体所見の有無)を行い,原因や基礎疾患が明らかでない場合にIIPsと診断する。高分解能CT診断が重要であり,IPFに特徴的な所見(蜂巣肺,牽引性気管支拡張,胸膜直下・肺底部優位の網状陰影)があれば,呼吸器内科・放射線科・病理医による合議〔集学的検討(multi-disciplinary discussion:MDD)〕を経てIPFの診断に至る。確定診断に至らない場合は,外科的肺生検や気管支肺胞洗浄を検討する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    IPFは予後不良(5年生存率30~50%)の指定難病である。診断後,早期治療が望ましいが,疾患進行には多様性があることが知られている。また,治療薬である抗線維化薬の効果が進行抑制であることを考えると,治療前に個々の症例の進行速度を把握しておくことは,治療開始後の有効性の評価という観点から有用である。3カ月間隔を目安に呼吸機能検査等を行い,努力肺活量(forced vital capacity:FVC)の経時的な低下速度を把握する。重症例や明らかな進行例では診療間隔を短くして迅速に対応する。このような経時的なFVC低下を伴う臨床経過を一般に慢性期と呼ぶ。

    一方,IPFには急性増悪と呼ばれる重要な病態があり,「新たな広範な肺胞陰影を特徴とする,急性で臨床的に有意な呼吸状態の悪化」と定義されている1)。①過去あるいは増悪時にIPFと診断されており,②通常1カ月以内の急性の悪化あるいは呼吸困難の進行,③HRCTで背景のUIP(通常型間質性肺炎)パターンに矛盾しない所見の存在と,新たなすりガラス陰影および/または浸潤影,④心不全あるいは体液過剰のみでは説明できない悪化,のすべてがみられる場合に診断される1)

    慢性期と急性増悪時の対応は異なることから別々に解説する。

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