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急性胃粘膜病変(AGML)(急性胃炎)[私の治療]

No.5160 (2023年03月18日発行) P.42

上田 孝 (東海大学医学部医学科内科学系消化器内科学)

鈴木秀和 (東海大学医学部医学科内科学系消化器内科学教授)

登録日: 2023-03-16

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  • 急性胃粘膜病変(acute gastric mucosal lesion:AGML)は,胃粘膜微小循環障害により急激な腹部症状(心窩部痛,嘔吐,吐血など)を発症する疾患である。また,上部消化管内視鏡検査で,出血やびらん,胃炎,潰瘍がみられる。原因としてはNSAIDs,低用量アスピリン,抗菌薬,抗悪性腫瘍薬が多く,またはアルコールやストレス(重度熱傷や精神心理的ストレス),腐食性物質,肝不全や腎不全などの臓器不全等が挙げられる。薬剤に起因する場合は,内服から1週間以内の症状発現が多く,アルコールでは数時間後に症状発現することが多い。一般的には原因の除去を行うことで改善が得られ,予後良好である。しかし,臓器不全や重度熱傷が原因の場合には,治療に難渋する症例もある。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    心窩部痛,心窩部不快感,吐血・下血を呈する。出血量に応じて頻脈や血圧低下を起こし,立ちくらみやめまい,動悸,冷汗や意識障害を伴う。高齢者では症状発現が乏しく,突然の吐血や下血,また重症の場合は穿孔をきたすことがあるので,注意が必要である。

    【検査所見】

    上部消化管内視鏡検査では,胃内に多発した浮腫,発赤,びらん,潰瘍などを認める。病変は前庭部や胃角部,体部の小弯に好発する。潰瘍はUlⅡ~Ⅲの浅い潰瘍が主体である。浮腫や不整形の潰瘍は,悪性リンパ腫など悪性疾患との鑑別が必要であるが,適切な治療で比較的早く治癒するので,経過からも鑑別は容易である。

    露出血管や活動性出血例では内視鏡的止血術を行う必要がある。また,食道や十二指腸,小腸にも病変を認める可能性があることにも留意する。

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