小児糖尿病は,インスリン分泌欠乏による①1型糖尿病と,②2型糖尿病,③遺伝的要因によるものを含むその他の特定の機序,疾患による糖尿病,に大別される。
小児糖尿病は,学校検尿(尿糖)でみつかる場合や医療機関での検査で偶然みつかることがある。多飲多尿の症状に気づかれていない症例も多く,毎晩夜中に飲水やトイレに行くことがあれば本疾患を疑う。糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)での救急受診も多い。傾眠傾向や倦怠感が強い児を診察した際は,血糖値を測定する。
学校検尿陽性や偶発的にみつかった糖尿病ではインスリン分泌能を適切に評価し,インスリン投与の適応を判断する。
1型糖尿病:HbA1c値,高血糖時のインスリン値,尿中Cペプチド,自己抗体(GAD抗体,IA-2抗体,インスリン自己抗体)等より1型糖尿病の診断に至る。乳児では頻回授乳や微量インスリン投与を必要とするため,インスリンポンプを選択することが多い。幼児期以降は,症例ごとにインスリンポンプかペン型インスリンかを検討する。インスリンポンプの場合は児の理解と協力が得られることが望ましい。カーボカウント教育を行い,患者自身(保護者)が糖質摂取量とインスリン投与量の調整ができるよう指導していくことが重要である。
長期合併症予防の観点からHbA1c値は有用であるが,日々の診療では24時間持続血糖モニタリング(CGM)から得られるtime in range,推定HbA1c等の指標を用いてインスリン投与方法を調整していく。また,成長や進学などの変化に合わせてインスリンポンプからペン型インスリンへ変更することもあり(その逆もありうる),患者の希望や生活様式に合わせて柔軟に対応していく。成人移行に際しては,インスリンポンプやCGMを使用している場合,自己負担が高額になることがあるので,注意が必要である。
DKA症例においては入院加療が原則である。経験のある専門医のもとで集約的治療が行われることが望ましい。
2型糖尿病:生活習慣の詳細な聴取より介入すべき点を見出していく。1日の糖質量を把握し,具体的な摂取量を提示することで患者も取り組みやすくなる。半年程度の食事・運動療法で糖尿病が改善しない場合は,小児に適応のある経口糖尿病薬を用いる1)。
肥満の既往がなく,インスリン分泌能低下を認め,膵島自己抗体陰性の若年(35歳未満)糖尿病患者では,家族歴の有無を問わず単一遺伝子変化に伴う若年発症成人型糖尿病(MODY)を鑑別に挙げる。HNF1A変異によるMODY3では,スルホニル尿素薬に対する感受性が高い。また,MODY3では肝腫瘍のリスクがあるため,年1回の腹部エコーを行う。
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